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音と身体と向き合い、人生を前向きに変えてくれたフランス留学ーサクソフォン奏者・長澤花奈インタビュー#19

皆さんこんにちは!アドバイザーの袴田美帆です。

フランス留学は、専攻楽器について学ぶだけでなく、新しい環境で視野を広げる貴重なチャンス。

日本でうまくいかずに悩んでいたことがあっても、様々な角度から自分を見つめ直し、成長できた方がたくさんいます。

今回インタビューに協力してくださった、サクソフォン奏者・長澤花奈さんもそのうちの1人。

直感を信じて留学したことで、音楽的にも身体的にもポジティブに変化したという、長澤さんの素敵な留学体験記をお届けします。

長澤 花奈 Kana Nagasawa
大阪府枚方市出身。同志社女子大学音楽学科卒業、音楽専攻科修了。2018年秋渡仏。パリ地方音楽院(12区)サクソフォン科を審査員満場一致賞賛付きの成績で修了。同音楽院フォルマシオン・ミュジカル科にてフランス式ソルフェージュも集中的に学ぶ。
ブーローニュ=ビヤンクール音楽院室内楽科修了、現在プロ準備課程在籍中。アドルフ・サックスコンクール(フランス:ライ=レ=ローズ)、ナント国際コンクール supérieur 部門第1位。2022年度よりパリ市小学校にて課外活動授業のサクソフォン講師を務める。サクソフォンをこれまでに陣内亜紀子、田端直美、Jérôme LARANの各氏に師事。
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目次

留学のきっかけ

ジェローム先生の故郷の音楽祭に参加しました

袴田:まず、長澤さんの留学のきっかけから教えていただけますか?

長澤:私の留学のきっかけは、2017年の秋に聴きにいった、ジェローム・ララン先生と原博已先生のコンサートで感動したことです。

その前からジェローム先生の存在は知っていたのですが、当時はまだ演奏動画もそんなになかったので、どんな演奏をされる方なのかは分かりませんでした。

でも、そんな数少ない動画からでも「なんかこの先生の音色いいな、もっと近くで演奏を聴きたいな」と思える何かがあったんですよね。

なので、来日公演が大阪でもあると知ったとき、すぐにチケットを予約しました。

袴田:そうだったんですね!その時は、日本で学生をされていた頃ですか?

長澤:はい。同志社女子大学を卒業して、専攻科という1年だけのコースに通っていました。

卒業しても楽器は続けたくて、留学に憧れはあったけれど繋がりが全くなく、ちょうど進路に悩んでいた頃です。

しかも、私は同志社女子大学のサクソフォン科の1期生だったので、先輩がどんな進路を歩んでいるかも知らず、これから自分のためにどう動いて、何をしたらいいのかが分からなかったんですよね。

そんなタイミングだったので、このコンサートには絶対行く!と決めて聴きに行きました。

そしたら、直感的に「私、この人に教えてもらったら絶対に変われる!」という気がしてきたんです。

何がどう変わるのかはもちろん分かりませんでしたが、とにかくそれくらいコンサートが良かったので、終演後すぐにメッセージを送りました。

袴田:その直感が、長澤さんを動かしてくれたのですね!

長澤:はい。そしたら「もし興味があれば、来年の4月に僕が参加する講習会がフランスであるから、良かったらきてみない?」と、講習会のお知らせをいただいたんです。

時期的にも卒業後でちょうど良かったし、やっぱり一度レッスンを受けてみたかったので、すぐに参加を決めました。

袴田:それはいいタイミングでしたね。その講習会はどうでしたか?

長澤:とても良かったです。レッスンの内容はもちろん、先生の人間的な雰囲気も明るくて楽しかったので、講習会が終わった頃の5月に受験を決めました。

当時、パリ区立音楽院の入試はまだ9〜10月に行われていた頃だったので、それでも間に合ったんですよ。

袴田:今は5〜6月に入試があるので、その点は注意が必要ですね。

フランスの生活も、長澤さんには合っていましたか?

長澤:はい。講習会自体は5日間ほどだったのですが、たまたま当時習っていたピアノの先生の妹さんがフランスに住んでいらっしゃって、2週間弱くらい彼女のお家にもお邪魔することができたんです。

袴田:そうですか、それは素敵ですね!

長澤:彼女はフランスで美術の先生をなさっていて、パリ郊外にあるお家のアトリエを貸していただきました。

講習会を含めて、大体半月ぐらいフランスで過ごしてみたのですが、春のいい季節だったこともあり、すごく気持ちよく過ごすことができました。

袴田:初めて来る時の季節って、すごく大事ですよね。

やっぱり晴れの日が多い春や夏がおすすめです!

入試・渡航準備について

音楽院の吹奏楽コンサート。ジェローム先生とクラスのみんなと。

袴田:では、入試の準備や渡航の準備を始められたのは、5月ごろからですか?

長澤:そうです。

実は私、この講習会に参加するまで海外はもちろん、国内で飛行機にすら乗ったことがなかったんですよ。

パスポートを取得するところから始め、初めてのフライトが13時間という、なかなかのチャレンジでした。

ビザの準備も分からないことだらけだったのですが、ネットで情報を見て書類を揃え、テスト生用ビザを申請するための準備をしました。

袴田:それは大変でしたね!家探しなどはどうされましたか?

長澤:家探しはもうどうにもできなかったので、日本で通っていた語学学校に家のサポートだけしていただき、日系の不動産屋さんにお願いしました。

袴田:渡仏まで3ヶ月ほどだと、全部自分で手配するのは難しいですよね。

入試を受けられたのは、どこの学校ですか?

長澤:ジェローム先生が教えていらっしゃる、パリ12区音楽院のSpécialisé課程です。

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今もですが、パリ区立音楽院の入試は、パリ地方音楽院と合同で行われ、自分が希望する音楽院に振り分けられるシステムになっています。

コロナ禍と重なった留学生活、身体の不調

留学一年目の終わり、スロベニアの講習会にて。講師の先生方も仲間たちもとても優しく、景色も開放的でした。

袴田:Spécialisé課程では何年過ごされたのですか?

長澤:Spécialisé課程の期間は2年か3年なのですが、私は2年目の途中でコロナ禍になってしまったので、3年目も継続することにしました。

2年目は実技試験も中止になってしまったので、先生とも相談してもう1年続けました。

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袴田:その時期は辛かったですよね。

私もちょうど卒業試験と重なっていたので、試験がなくなって悔しかったのを覚えています。

長澤:はい、これからの留学生活をどうしようかと、ロックダウン中に色々と考えていました。

実はもともと身体を痛めがちで、留学した直後から身体の方も辛くて…

日本にいた頃にすごく無理をしながら身体を使ってたみたいで、専攻科在学中ごろから、今までできていたことがどんどんできなくなっていったんです。

袴田:そんなことがあったんですね。

長澤:卒業試験の準備をしていても、プログラムを通すこともできなくて。

フランスに来て基礎を全部やり直すことになり、先生からも「力を抜いて」といつも言われていたけれど、その感覚すら分からなくなっていたんです。

私にはまだまだ足りないことがある!と思って留学にきたので「力を抜く」よりも、他のことに意識が行ってしまっていたんでしょうね。

それで、自分の意志と身体が全然繋がらなくなってしまったんです。

流石に先生もみかねて「あなたの身体はよくない状態だから、よく知っているカイロプラクティックの先生を紹介する。ここに行ってみなさい。」と、いい先生を紹介してくださいました。

そうしたら、とんでもなく全身の筋肉が硬直していることが分かったんです。

それを自覚すると、みるみるうちに身体が痛くなってきて、まず「痛い」という感覚を覚えることから始まりました。

日本にいる時からの習慣になってしまっていたので、今も継続して治療には通っています。

コロナ禍では楽器の練習は思い切ってほぼお休みし、オンラインでもカイロプラクティックの先生とコンタクトをとって遠隔で施術をしていただいたり、過ごし方のアドバイスをもらいました。

身体を休めるチャンスだとも思ったので、ゆっくりヨガをしたり、身体と心を落ち着ける時間をたっぷりと取ることができました。

袴田:そんなにひどい状態だったのですね。いい先生に出会えて良かったです。

長澤:そうなんです。

それまで、何かできないことがあると「練習不足だ、自分の練習方法や考え方が悪いんだ」と自分を責めていたので、それもよくなかったなと思います。

カイロプラクティックの先生と出会ってからは、身体が柔らかくなると同時に、思考もすごく柔らかくなってきたのを感じました。

そうすると、自分のやってることが少しずつ認められるようになったというか、何事も前向きに生きられるようになって、色々と上手くいくことも増えたんです。

私にとってこの留学期間は、色々なものを身につける留学というよりかは、身体の痛みや余計な思考を取り除いて、自分の中に元々ある本当に大切なものを発見する時間でしたね。

袴田:身体と心って、本当に繋がっていますもんね。

それはどうしても自分で実感することでしか改善できないことですし、少しずつでもよくなっていって良かったです。

長澤:まさにその通りです。

フランスって、あんまり自分を責めるような人もいないし、視野が広い人が多いんですよね。

そういう点でも、フランスに来て考え方がポジティブに変わりました。

ソルフェージュ科について|日本とフランス、音との向き合い方の違い

2区サックス科クラスで演奏。立派な建物で演奏でした。

袴田:長澤さんは、ソルフェージュ科にも通われていたとのことですが、どんなきっかけでソルフェージュを専門的に学ぼうと思ったんですか?

長澤:留学1年目から、ソルフェージュの授業を担当していた先生がすごく活力あふれる元気な方で、外国人の私のこともとても気にかけてくれていたんです。

その先生が、あるとき「まだフランスに残るのなら、Spécialisé課程のソルフェージュ科があるから受けてみない?」と言ってくれたことがきっかけです。

フランス式のソルフェージュ授業の内容はとても興味深く、大変だったけど楽しくやれていたので、フランスにもまだ残りたかったので、受験に挑戦しようと決めました。

それがちょうどコロナ禍直前のことだったので、ロックダウン中にオンライン受験をしました。

袴田:ソルフェージュ科では、どんな授業があるのですか?

長澤:聴音や楽曲分析、複雑なリズムの書き取り、歌、初見、短いメロディーの暗譜、移調などです。

これらの内容が、週に約6時間ある必修授業に入っています。

12区音楽院のソルフェージュ科は13区音楽院とも連携していて、授業は両方の音楽院で行われています。

年度ごとに取り組む作曲科が決められていて、配られる課題もテーマの作曲家がメインです。

オーケストラのスコアを渡されて、全てのパートを自分の楽器で演奏したりもするんですよ。

袴田:盛りだくさんですね!ソルフェージュ科の授業が、サクソフォンの演奏にも役に立っていると感じることはありますか?

長澤:はい、もう全てが演奏に繋がっています。

私は絶対音感があったので、よくある聴音は昔から得意だったのですが、フランスって相対音感からも聴音することが必要になってくるんです。

ソルフェージュ科打ち上げのピクニック!みんな優しくてとても雰囲気の良いクラスでした。

授業でも、ただそれぞれの音を当てるだけではなく、ちゃんと音程の幅で聴き取れるように先生が説明してくれます。

私は今まで、音程の違いとか、そこで生まれる響きとかをそこまで集中して気にしたことがなかったので、耳の使い方が全然違うんだなと痛感しました。

袴田:それは面白い気づきですね。

耳の使い方の基礎というか、根本的な音との向き合い方というか、音程の感じ方は確かに全然違いますもんね。

長澤:そうなんです。日本では、先生がピアノで適当なリズムやメロディーを弾いて、それを書きとる、ということしかやっていなかったのですが、こちらで扱う教材の質の違いも感じました。

例えば、オーケストラの曲のピアノリダクション版を渡されて、こっからここのメロディーには何の楽器を使ってるか、っていう感覚的な書き取りもあったりするんです。

実際の楽曲を使っているので、今日はどんな曲に出会うのかなと楽しみでした。

フランスのソルフェージュって、とにかくいろんな方面から、音楽を聴く人の耳を作ろうとしてるなって思います。

袴田:フランスのソルフェージュ、特に子ども向けの授業などは賛否両論ありますが、専門課程のレベルだとそんな音へのアプローチがあるのですね。

長澤:小さい子はみんな、このマニアックなソルフェージュが嫌いで辞めてしまう子も多いですからね。

ただ、これを専門的に深くやるというよりかは、広く浅く耳やリズムの感覚を養うことで、そこから先は自分で応用して音楽をつかむ耳を育てていく、という感じだと思います。

そういう意味でも、私はこのソルフェージュ科で学び、日本とフランスの教育の違いにも触れられたので、とても楽しかったです。

コンクールへの挑戦

Saxo Voce のコンサート。ソリストにジャン=イヴ・フルモー氏を迎えて。

袴田:ありがとうございます。

留学中に何かチャレンジしたコンクールや、印象に残っているイベントはありますか?

長澤:私はコンクールがあまり好きではないんですが、参加したコンクールで結果が出たものが、ライ=レ=ローズ国際コンクールと、ナント国際サクソフォンコンクールです。

どちらも、ちょうどコロナ禍が落ち着いた留学4年目に挑戦したものなのですが、2つともSupérieur部門で1位を頂けたのが嬉しかったです。

1番上の課程ではありませんが、ソロで何かしらの結果が出たっていうのは純粋に嬉しかったし、身体の調子も良くなってきて、クラスの雰囲気も良く、全力を出し切ることができました。

ジェローム先生にも「カナ、本当に変わったね!」と言ってもらえたりして、嬉しかったですね。

先日も、アンドラ公国で行われたコンクールに参加してきたのですが、国のカラーや、吹いている人の性格、音楽への思いなど、今まで聴こえてこなかったものが聴こえてくるようになって、この6年間で耳が変わったなと実感しています。

袴田:素晴らしいですね。

身体の不調や色んな思いがありながらも、それが形になっているのが伝わってきます。

今後の活動について

学校からの依頼で、院内コンサートをしました。

袴田:長澤さんは、留学後は日本に帰国されますか?

長澤:はい。今年の秋に完全帰国予定です!

ちょうど地元の枚方市に新しいホールができたのですが、そこでの取り組みが面白そうで、何か関わって行けたらいいなと思っています。

こちらで運よく同じ地元のピアニストと出会い、日本でも一緒に演奏できたらいいなと思っているので、デュオの活動も進めていく予定です。

袴田:一緒に活動する仲間がいるというのは、とてもありがたいですよね!

長澤:はい!演奏することは大好きなのでもちろん続けていきますが、ただ私は身体のこともあるし、ソリストメインで活動していくわけではありません。

自分の経験から、身体と思考の柔軟性を重視したレッスンなども、積極的に行っていきたいと思っています。

自分が中学生や高校生、遅くても大学生のときにはこの考え方に出会っていたかったですし、自分と同じような状況になってしまう人を助けていきたいです。

袴田:頼もしいですね。私も身体の使い方は本当に大切だと思っているので、ぜひ関西で広めていってください!

これから留学を目指す方へメッセージ

ソルフェージュ科卒業試験、演奏課題のグループメンバーと。課題がドビュッシーの海だったので、ブルーの服で揃えました!

袴田:最後に、これから留学される方へ向けてメッセージをお願いします。

長澤:私は本当に留学して良かったと思っていますが、こればっかりは国や文化との相性もあるので、一概には言えないですね。

でも、少しでも海外に興味があれば、自分の感覚や思考を変えるいいチャンスだと思います。

自分を変えることって、もちろん本人の努力も必要だけど、環境ってすごく大きな影響があると思うので、まずは短期でも行ってみるのがいいのではないでしょうか。

私は24歳のときに来たのですが、周りはもう仕事を始め、結婚したりする人もいたので、少しは気になるんですよね。

それに、留学は優秀な人だけがするものだというイメージが強かったので、昔は「私なんて…」とずっと感じていました。

でも「人がこうだから私もそうじゃないといけないのかな?」「私なんかが行ってもいいのかな?」っていうのは思わなくても良くて、自分の直感を信じてもらいたいです。

私はコンサートの時の直感を信じて良かったと思っています。サックスのことだけでなく、人生が変わったので。

あと、ありがたいことに私は日本の師匠が「親に借金してでも今行ってらっしゃい!」と、全力で留学を後押ししてくれたので、そのパワーももらいました。

だから、そういうポジティブな気持ちにしてくれる人を大切に、自分の道を進んで行ってください!

袴田:最後に頑張るのは自分なので、そういう前向きな気持ちにしてくれる人って本当に大事ですよね。

今日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

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