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自分の殻を破るべく渡仏!帰国後は活動の幅を広げ、ホールの副代表に就任ーNPO法人 音降りそそぐ武蔵ホール 副代表理事 / フルート奏者・高城いずみインタビュー#16

みなさんこんにちは!アドバイザーの袴田美帆です。

今回インタビューさせていただいたのは、NPO法人音降りそそぐ武蔵ホール副代表理事・フルート奏者の高城いずみさんです。

社会人経験を積みながら資金を貯め、4年半の留学を実現された高城さん。

移民の多い地区の音楽院に通ったからからこそ得られた学びや、帰国後ホールに就職された経緯、そして現在のお仕事の様子まで。

フランスの音楽院での経験が、ホールの運営の仕事にどのように繋がっているのでしょうか?

高城 いずみ Izumi Takagi
埼玉県飯能市出身。フルートを塚原由香、白尾隆、ミエ・ウルクズノフに師事。
中学吹奏楽部入部をきっかけにフルートを始め、楽譜も読めぬまま気合で武蔵野音楽大学へ入学。個性に乏しい演奏に悩み、自分の殻を打破すべく渡欧。パリ市立ジャック・イベール音楽院にて研鑽を積む。帰国後は積極的に室内楽コンサートやプロアマ混合のコンサートの開催などを様々な企画をし、演奏活動と並行してプライベートレッスンにも精力的に取り組む。これまでの活動が認められ、現在NPO法人音降りそそぐ武蔵ホール副代表理事。自宅レッスンや演奏活動、コンサート企画からプロデュース、フライヤーデザイン、動画の撮影や制作など活動は多岐に渡る。
武蔵ホールHP / Youtube / note

目次

留学のきっかけ

オーケストラの課外授業の様子

袴田:まず、留学のきっかけからお伺いしてもいいですか?

高城:はい。きっかけは大学時代の師匠の勧めです。もともと留学への憧れはあったのですが、留学費用を自分で賄わなければいけなかったので、武蔵野音大を卒業した後は3年ほど働きました。

アルバイトと掛け持ちしながら演奏活動やレッスンを続けて、資金の目処が経ったところで留学準備を始めました。

でも実は当初、ドイツに留学したかったので、ワーキングホリデービザでドイツに行ったんです。

袴田:そうだったんですか。ドイツに留学したいと思ったのはどうしてですか?

高城:自分の師匠がドイツに留学されていたので、漠然とドイツで勉強したいなと思っていました。

ですが、まずは自分の目で色々確かめながら、音楽院探しや先生探しをしたかったので、ワーキングホリデービザで1年間滞在することにしました。

10ヶ月ほど語学学校へ通いながら、気になった先生へ自分でコンタクトを取り、レッスンを受けに行こうと思って、とりあえず貯金したお金を全部持ってドイツに行ってしまったんですよね。

袴田:なんと潔い、行動力がすごいですね!

高城:はい。受験に関する情報も多くなく、どんな学校があるかも全然分からなかったので、行ってみることにしました。

そんな感じで、語学学校やプライベートレッスンに通いながら、ドイツには1年弱いたんですけど、ちょっとスランプに陥ってしまって…ある日音が出なくなってしまったんです。

異国で1人、あれこれ考えながら奏法を変えたりしているうちに、迷走してしまって。

そういうこともあって、ちょっと一旦楽器をやめてどこかで働こうかなと思っていたときに、パリに留学していた友人が、フランスにすごく良い先生がいる!とミエ・ウルクズノフ先生を紹介してくれました。

彼女は日本人で身体もすごく小さいのに、パリでパワフルに活躍していらっしゃって、奏法や身体の使い方に関しても、プロフェッショナルな方なので、もしよかったら1回だけでもレッスンを受けに来ないかと誘ってくれました。

そこでパリへレッスンを受けに行ってみたところ、本当に素晴らしい先生で、すぐにあなたの元で勉強したいとお伝えしました。ミエ先生も「音楽院に入れるように協力するから、勉強したい国にこだわりがなければパリにおいでよ!」と言ってくださいました。

ただ、フランス音楽院事情は資格を取ろうとすると年齢制限がとても厳しかったため、先生が教えていらっしゃる区立音楽院で、レッスンだけ受けられるクラスに在籍することにしました。

袴田:とても素敵な出会いだったんですね。

ディスカッションから学んだこと

音楽院でのアトリエ発表会

袴田:音楽院の生活で、何が印象に残っていますか?

高城:生徒たちが、授業中にとにかくたくさん話し合ったり、討論したりしていたことですかね。

個人レッスンが勉強になったことはもちろんですが、室内楽のレッスンや他のグループレッスンの際に、音楽だけではなく、文化や歴史、政治のことまで幅広く話し合っていたことはとても興味深かったです。

私がいた頃は、ちょうどテロが続いた時期でもあったのですが、年齢や性別、民族の壁を越えて自分の意思を伝え合う様子が印象的でした。

異なる考えをぶつけ合うけれど、相手に押し付けることはしないんですよね。

理解し合うことが会話のゴールなのではなく、様々な意見交換をするのが目的というか…日本ではなかなか見ない光景で興味深かったです。もちろん分かり合えないままなので、若干けんか腰ではありましたが…。

袴田:なるほど。フランス人は本当に討論好きですが、確かに理解し合うこととは違うなと、改めて聞くとそんな感じがしますね。

パリには合計で何年いらっしゃったのですか?

高城:4年半です。その間はずっとミエ先生の元で勉強させてもらいました。

格安で受講できる、パリ市のフランス語市民講座

持ち物は楽器とカメラとお金だけの留学生活

袴田:フランス語はどのように勉強されたのですか?

高城:パリ市が主催している市民講座(主に移民向けの語学プログラム)があって、そこに短期で参加していました。

価格も月数千円と安いので、毎回抽選になるのですが、当たった月にはそこに通っていましたね。

とにかく資金に限りがあったので、語学学校に通える余裕がなくて…

市民講座を活用しながら、ほとんど独学で勉強していました。

袴田:そうだったんですね。市のプログラムは、知らない人も多いと思うので、参考になると思います!

移民の多い地区での気づき、そして日本に帰国

教会でのコンサートの様子

袴田:留学中に、レッスン以外で印象に残ってることや、楽しかった経験はありますか?

高城:私が通っていた19区の音楽院の周りは、移民が多い地域だったのですが、異なるルーツや文化を持つ人たちが、堂々と共存している様子が印象に残っています。

いい意味で、他人に干渉しない。様々な違いを、個性として認め合っているという文化が、いいなと思いますね。

袴田:帰国されるタイミングは、どのように決められたのですか?

高城:やはり私は、自己資金のみで留学していたこともあり、留学資金が無くなるまでフランスにいよう、と思っていました。

先生からは、フランスに残って仕事を見つけたら?とアドバイスいただいたこともありましたが、ちょうど留学3年目あたりに新しい楽器を購入する話も出ていたんですよね。

当時使っていた楽器がいまいちだったので、もしもいい楽器があればすぐにでも購入したいと思っていて。

楽器を購入したら留学資金がそこで尽きてしまうので、楽器を買って日本に帰るか、もう1年滞在するかを迷っていました。

そんな時に、先生から「楽器の問題はとても大きいから、とりあえず探すだけ探してみよう」と言われ、4年目に楽器屋さんを色々巡っていました。インターネットの掲示板で、音楽院のフルート科の先生が楽器を売りたいとの記事を載せているのを見つけて、コンタクトを取ることができました。良い楽器に出会えたので楽器を購入し、そこから先は資金が尽きるまで!と決めて、半年間ほどフランスに滞在していました。

なので、私の留学生活は、持ってるものを全部持ってドイツ・フランスに行き、資金が0になったら日本に帰国!という、とても計画的とは言えないものでしたね(笑)

袴田:でも、そこまで自分のペースで留学を実現できた、というのは素晴らしいと思います。

留学中、一時帰国はされましたか?

高城:1度もしなかったです。往復の航空券代を払う余裕もありませんでしたし、時間もお金もフランスでの経験に使いたかったんです。その分、バカンスには格安航空券や寝台列車なんかを使って隣国への旅行も楽しめました。カメラとバックパックだけで、本当にどこへでも行くことができました。今もホールの運営以外にも写真や動画の撮影が仕事になっているのも、このころの経験が大きいと思います。

袴田:そうだったんですね。

留学資金が限られていると、なかなか行動に踏み切れない人も多い中、4年半一度も帰国せず留学生活を続けられたということに、強い覚悟を感じました!

高城:はい。とにかくフランスに住めるだけ住んで、レッスンを受けて、色んな人と出会う中で、内面の変化が感じられたり、自分に自信を持つことができたら日本に帰ろう、と思っていたんですよね。

修士号や音楽院の資格を取得したい!と思ってフランスに行ったわけではないので、そういう意味では、自分のペースで納得するまで勉強が出来てよかったと思います。

袴田:そうですね。とても素敵な留学生活だなと思います。

留学後のキャリアについて

クラウドファンディングで開催した西野亮廣さんの光る絵本展

袴田:留学から帰国されて、現在勤務されている音降りそそぐ武蔵ホールに就職されるまでは、どのようなお仕事をされていたのですか?

高城:日本へ帰国したら、人に伝えることが得意なので、ますば音楽教室の講師をやってみようと思っていたので、2年契約で教える仕事を始めました。

ですが、いざやってみると「音楽教室というシステム」は自分には合わないということが分かって、2年で退職しました。じっくりと人と向き合って仕事がしたかったのですが、非常に限られた時間と制約がある環境でのレッスンは私には合いませんでした。その後は自宅で時間をかけた個人レッスンを行っています。

帰国直後は教える仕事と並行して演奏活動も続けていたので、常に活動の場を探していました。

フランスでは、お客さんとの距離が近いサロンコンサートがたくさんあったので、日本でもそういう場所で演奏したいなと思っていたんです。

キャパ100名前後で、響きがいいところを探していたら、自分の活動範囲内に武蔵ホールを見つけたので、頻繁に利用していましたね。

ある時、今の館長に「うちで働いてみない?」というお話をいただいて、ホールの仕事にも興味があったので「是非!」という感じで始めて、あれよあれよという間に副館長になっていました。

NPO法人武蔵ホールでの仕事

副館長就任1年目のコロナ渦に始まった配信コンサート第0回

袴田:ホールでは、どういったお仕事をされているかお伺いできますか?

高城:武蔵ホールはすごく小さなホールで、主に代表理事と副代表理事の私で運営しています。

基本的にはホールの自主企画の運営からお客様の企画のサポート、予約の対応まで全て担当します。

武蔵ホールはNPO法人なので、地域と音楽家の方々、もちろん音楽だけに関わらず芸術に携わる方々にどう貢献できるかということを考えながら、企画を立てたり運営をしています。そして当然どうホールを存続させていくか、ということも大きな課題です。

袴田:すごいですね!今のお仕事で、フランスの留学経験が生かされてると感じられることはありますか?

高城:ホールを利用される方って、趣味で音楽をなさっている方から、プロの方の自主企画、音楽教室の発表会や学生さんのコンサート、音楽以外の撮影やセミナー利用など、とにかくいろんな方がいらっしゃるんですよね。

なので、フランスのように ”全然違う考えの方々が、平行線のまま存在する” ことが、このホールとリンクしているような気がします。

留学経験で「いい意味で理解し合わない」という視点を持てたことで、物事の見方が大きく変わりました。

仕事でもプライベートでも、全てを理解しなくても相手に寄り添える自分であれるように心がけています。

袴田:すごく共感できます!

まず、フランスでは個性の幅がものすごく広いから、日本の中での差ってそんなに気にならなくなりますよね。

個性の差に感情を抱かなくなるというか、個性を個性として受け入れられるというか。

高城:そうですよね。私は私、あなたはあなた、というスタンス。

袴田:まさにそうです。

でも、そうやってありのままを受け入れてくださる人がホールの窓口にいらっしゃると、アーティスト側も気持ちよく演奏できると思います。

高城:そう言っていただけて嬉しいです。

実際に私も留学から帰ってきて、ホームになるようなホールがあったらいいなと思い、都内、埼玉含めてキャパ100名前後のサロンホールを探したのですが…

私設のホールは、オーナーや経営者のキャラクターがすごく出るんですよね。

ホール自体が良くても、使用にあたって何かと制限が多かったり、気持ちよく使えなくて肩身が狭い思いをすることもありました。逆に雰囲気は良くても響き自体がいまいちということも多かったです。

もちろん、金額が高すぎて自主企画のコンサートをするには現実的でないホールも沢山あります。そんな中で、武蔵ホールが私にとって一番バランスよく、しかも自分の生活圏内だったので、自然に「ホーム」になっていきました。

天井が高く、手を加えなくても響きがいいので、ここ数年ではYouTubeやMVの撮影や録音にも使われることが多くなりました。

2階席もあるので、生のコンサートと録画・配信を同時に開催するなんてハイブリットな音楽会も可能です。

一般的な同じキャパシティのホールに本格的な機材を入れると、会場全体使ってしまうことが多く、配信だけ、またはコンサートだけ、と分けなければいけないことが多いですよね。

そんな中、ここでは一階席全てに機材を置いても、2階席は40〜60人ほど観客を入れられるので、プレミアム感のあるコンサートが演出できます。現在はそのような形でほぼ毎月Youtubeから生配信コンサートも行っています。

袴田:それはいいですね!番組収録を観覧しているような感じで、面白そうです。

留学したい方へメッセージ

右も左も分からぬところから配信コンサートを始めました

袴田:最後に、これから留学したい方へ向けてメッセージをお願いします。

高城:情報の精度と速さが格段に上がった今現在では、留学に求められる価値すら変わりつつあると思います。

コンクールの賞や出身大学に関わらず、自信をもってセルフプロデュースができるか、バランスよく物事を俯瞰しながら失敗を恐れず挑戦を繰り返せるか、が問われる時代だと思います。

私にとっての留学経験とは、その感覚を磨くための期間だったように思います。

勉強はインターネットさえあればいつでもどこでもできる時代だからこそ、「留学」という生身でしか体験できない経験は得難いものです。そして他国でしか味わうことができない日本人の個としてのアイデンティティを持つ大きなチャンスです。

お金と時間を盛大に使って、素晴らしい失敗や挑戦を沢山経験してほしいと思います!

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