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18歳で渡仏。高校生だった彼女が留学を決意した経緯、そしてこれから目指すキャリアとはーサクソフォン奏者・小椋千晴インタビュー#10

皆さんこんにちは!フランス音楽留学アドバイザーの袴田美帆です。

今回は、高校卒業後すぐにフランス留学し、現在はパリ国立高等音楽院の修士課程・教員養成課程で研鑽を積まれているサクソフォン奏者・小椋千晴さんにインタビューしました。

小椋さんは、私と同じ2015年度に留学されているので、今年でフランス生活は9年目。

ご自身の修士研究・演奏活動に打ち込みつつ、音楽院でサクソフォンを教える仕事に就いている小椋さん。

18歳で渡仏してから、どのような道を歩んでこられたのでしょうか?

小椋千晴 Chiharu Ogura
岡山県岡山市出身。明誠学院高等学校を卒業後渡仏。エヴルー音楽院、オルネー・スー・ボア音楽院を卒業後、パリ国立高等音楽院サクソフォン科学士課程に入学。現在同音楽院修士課程および、国家教育資格取得課程に在学中。現代音楽の普及を目的に、新曲初演や室内楽グループでの活動を積極的に行う。また、パリ郊外のヴィルモンブル市立音楽院にてサクソフォン講師を務め、学習者用の現代音楽レパートリー開拓、パリ・フィルハーモニーと提携したアウトリーチなど、教育活動にも携わる。
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目次

留学のきっかけ

パリ国立高等音楽院教授、クロード・ドゥラングル先生のお家でご飯会

袴田:まず留学のきっかけから、お伺いしてもいいですか。

小椋:はい、まず高校生の頃に外国に興味があり、何か日本語以外の語学を習得したいと思っていました。

そして、進路を考え始めた高校2年生の頃、語学留学するために留学したい、と当時習っていたサクソフォンの岸本和宣先生に相談したところ「せっかくだったら、サクソフォンで留学してみれば?」と言われたことがきっかけで、フランス留学に興味を持ち始めました。

吹奏楽に力を入れている高校に通っていたので、各楽器の先生が高校に定期的に教えにいらしてたんです。

袴田:そんなきっかけだったのですね!そこで、日本の大学には行かずに、高校卒業してすぐフランスに留学しようと思われたんですか?

小椋:最初は、日本で外国語大学とかに行こうかと思っていたのですが、学校の先生方にはあまり背中を押してもらえず・・・

3年生になるまで進路に迷っていたのですが、色々な人に話を聞きながら、留学に関する情報収集をしていくうちに、だんだんとフランス留学を本気で考えるようになって、高校卒業したら留学しようと決めました。

パティスリーでフランス語?留学前の準備について

素敵な会場での演奏会

袴田:なるほど。当時フランス語は勉強されていましたか?

小椋:はい。留学を決めた高校3年生のときに、フランス語の個人レッスンに通い始めました。

部活の合間を縫っては、地元・岡山にある近くのパティスリーに行き、レッスンを受けていました。

カフェスペースのあるパティスリーだったのすが、そこを借りてレッスンをされてるフランス人の先生をたまたま見つけたんです。

袴田:パティスリーでフランス語のレッスンなんておしゃれですね!

小椋:はい。お店の一角で教えてもらっていて、そこは高校からも近かったので、お昼休みや放課後に自転車でおにぎりを食べながら行き、レッスンを受けてました。

袴田:授業、部活、楽器のレッスンにフランス語・・・ものすごく忙しい高校生活でしたね!

フランス留学の準備をしてるときに、何か大変だったことや、こんなサービスがあったらよかったなと思うことはありましたか?

小椋:なんとなく、色んな人たちにビザのことや、留学準備に関する話を聞いたりしていましたが、結局自分が留学し始めるまであまりよく分かっていませんでした。

あとはやっぱり住宅探しですかね。私は日本出発前に、フランスの日本人用サイトから日本人の大家さんにコンタクトを取り、いつからいつまでここに住みます、という口約束でフランスに行ったんです。

契約書もなかったので、着いてからその家が本当にあるかも保証されていなくて、少し不安でした。

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小椋:あと日本にいた頃は、ものすごく高い留学サービスしか見つからなくて、説明などを聞きに行っても、何をお手伝いしてくれるのかがわからなかったんです。

なので、何が必要なのかをちゃんと理解できて、早く自分でどうにかできるようにアドバイスをもらえるようなサービスがあったらよかったなと思いました。

袴田:そうですよね。結局、ただ単に代行サービスに丸投げするよりも、自分でちゃんと理解して行動することが、将来に繋がっていきますもんね!

私もそんなサービスが留学前に欲しかったので、Music Discoveryでは、初めに留学までのやることチェックシートを用意して、どこに向かって何をやるべきなのか、可視化できるようにしています。

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長期留学前にフランスへ

Ensemble intercontemprainとのオーケストラセッションに参加

袴田:小椋さんは、長期留学する前に、フランスに行かれましたか?

小椋:はい。高校3年生が終わる春休みに1週間、当時名古屋で教えてらっしゃった、服部吉之先生と一緒にフランスに行ったんです。

何もかもが初めてでしたが、パリとリヨンに行って色んな先生のレッスンを受けたり、聴講もさせてもらいました。

当時は言葉の壁がありながらも、フランスにいる自分が想像できたので、ここで留学を決意しました。

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それが3月で、そのあとは6月に語学学校に登録して渡仏しました。

当時は音楽院の入試が9月以降だったので、語学留学として学生ビザを申請しました。

すぐにバカンスシーズンに入ったので、7月、8月にはギャップ国際サクソフォンアカデミーと、ハバネラ・サクソフォンアカデミーの2つの講習会に参加しました。

そこでフランスで初めての先生、Sylvain Malézieux先生と出会い、この先生に習いたいなと思いました。

ちょうどその講習会で、Sylvain先生の音楽院を卒業された日本人の先輩と出会い、留学生活について色々と聞かせてもらって、とても魅力的に感じたので、その後9月にエヴルー地方音楽院の入試を受け、DEM(音楽研究資格)が取得できる課程に入学しました。

袴田:先生だけでなく、実際の生徒さんとの出会いも大きいですよね!

パリ国立高等音楽院での学び

パリ国立高等音楽院第1課程卒業リサイタル

袴田:今、小椋さんはパリ国立高等音楽院(=以下CNSM)で学ばれていますが、入学してから今まで大変だったことや、頑張ったことについて教えていただけますか?

小椋:やはり最初は、周りのレベルが高く、それを自分と比べてしまってすごく苦労しました。

CNSMのサクソフォンクラスでは、毎週違うレパートリーを持っていくのが当たり前だったので、練習のリズムを掴むのがとても大変でした。

地方音楽院時代は「CNSMの入試のため」「コンクール・試験のため」など、すでに課題曲がある状態でのレッスンが多く、それに慣れてしまっていたんです。

袴田:すごく共感します!

CNSMに入ると「自分がどんな演奏家になりたいか」「どんなレパートリーを自分のものにしていきたいか」といった「自分だけのプロジェクト」を立ち上げるために、まずは膨大なレパートリーをこなして、そこからさらに先を目指していくんですよね。

小椋:はい。その「自分のプロジェクト」を見つけるために、人と比べず自分1人に集中できるようになったのが最近のことで、室内楽や作曲家、ダンサーとのコラボレーションを積極的に行っています。

学士課程の卒業試験では、室内楽作品2曲(そのうちの1曲は舞踏科の生徒とのコラボレーション)と、弦楽アンサンブルバックでソロ(L.Berio:CheminIV)を演奏しました。

これを実現させるためには、楽器の練習以外にも、アーティストとのコミュニケーションや、リハーサルの計画作り、合わせ場所の確保など、今まで経験できなかったことが数多くあったので、とても勉強になりました。

袴田:私も今年聴きに行ったのですが、とても素晴らしかったです!

サクソフォン科と教員養成課程で実現したい研究

教えている音楽院で生徒の発表会

袴田:現在は、サクソフォン科以外にも何か勉強されていますか?

小椋:はい。DE(Dipoôme d’État) という教育免許を取得するための教員養成課程に在籍しています。

今は2年目なのですが、昨年から始めたMédiation(メディアシオン)という授業がとても面白いです!

メディアシオンとは、日本語に訳すとアートマネジメントに近いんですが、ニュアンスが若干違いますね。

芸術と人を繋げる、という意味では共通しているのですが、フランスのメディアシオンの方が、よりアーティスト側の役割に寄り添っている感じです。

昨年は、1年間の授業を通してチームを作り、近くの小・中学校にアウトリーチに行きました。

単に曲の説明をするだけではなく、映像を使ったり、曲のテーマを一緒に歌ったり、色々な時代の曲をうまく繋げたり・・・

サクソフォンは現代音楽が多くて、アウトリーチには向かないのではないかなとも思いましたが、むしろサクソフォンだからこそできることが沢山あって、嬉しい発見になりました!

あとは修士論文に向けた研究が今年から始まったのですが、子どもたちでも取り組める現代音楽の教本を作ろうと思っています。

将来的には出版したいと思っているので、何人かの作曲科の子にも声をかけて、取り組み始めたところです。

CNSMからも、活動資金が出るかもしれないので、近い未来に実現できればいいなと思っています。

袴田:すごい!それは楽しみですね。

小椋:はい、自分が教員養成課程とサクソフォン科、両方に在籍しているからこそできる研究がしたいと思ったので、このプロジェクトにすると決めました。

留学中のアルバイト、現在の仕事について

音楽の日の野外演奏

袴田:フランスに今留学中に経験した、アルバイトやお仕事について教えていただけますか。

小椋:はい、CNSMに入る前は日本食料理店でのアルバイトを週に3日ほどやってました。

朝から夕方まで練習して、夜にアルバイトして・・・という生活を3年ほど続けていました。大体学生ビザで働ける最大の、週に20時間まで入って、月に600〜700ユーロほど稼いでいました。

CNSMの教員養成課程に入ってからは、郊外の音楽院でサクソフォンの講師として仕事を始めました。それは週13時間で、3ヶ月に1回2週間のバカンスもあって、月に1000ユーロほどいただいています。

袴田:小椋さんは、これからもフランスに残って活動される予定ですか?

小椋:はい。今留学して9年目なんですが、初めの頃は金銭的にも辛くて、それでも留学生活は続けたかったので、何か仕事を見つけなければいけなくて・・・

とりあえず飲食店のアルバイトから始めていたら、だんだんと教える仕事や、コンサートの仕事もいただけるようになったので、しばらくはこのまま経験を積んで行こうと思っています。

でもやっぱり音楽院で教えるだけでなく、演奏活動も広く行っていきたいので、将来的に活動するための地盤作りをこれから頑張りたいです。

定期的に活動できるグループを作ったり、アウトリーチも継続したり、CNSMを卒業するまでに、少しずつ始められたらいいなと思っています。

袴田:積極的に動き始めているのですね!とっても素敵です!

演奏していて楽しかった瞬間

お世話になっているアーティスト・外山舞さんのお家での撮影会

袴田:今までの留学生活で、楽しかった思い出はなんですか?

小椋:誰かと一緒に演奏している時に「楽しい!」と思えたことです。

最近、ポール・モーリス作曲「プロヴァンスの風景」を演奏する機会が多かったのですが、コンクールやコンサートで何人ものピアニストの方と共演したんです。

それで、その後に受けた、いつものCNSMの伴奏合わせのレッスンで、いつもはちょっと厳しいクラスの公式伴奏員・伊藤富美恵さんとの演奏がとても楽しくて。

富美恵さんにもレッスン終わりに「今日はどうだった?(笑顔)」と聞かれ、思わず「楽しかった!」と笑い合えるくらいだったんです。

些細なことですが、色んな演奏をしてきたことが、この一瞬の楽しさ、笑顔に繋がったんだと思うと、とても嬉しくなりました。

留学したい方に向けてメッセージ

パリ・フィルハーモニーでのコンサート

袴田:最後に、これから留学したい方に向けてメッセージをお願いします。

小椋:おそらく、みんなフランスに行きたいって誰かに言ったときに「誰に習いたいの?」「その後はどうするの?」っていうのを結構聞かれると思うんですが、それって留学する前は見つからないのが当たり前で、実際に留学してから自分で自然と出てくることだと思うので、そんなに気負わなくても大丈夫です。

とにかく、留学するという第一歩を踏み出すことが大事だと感じています。

あとは、確定申告を忘れないように、住民税は学生だと払わなくてもいいから、何か紙が来ても払いに行っちゃだめ、ということですかね。

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袴田:そうですね。これに関しては自分が損をしてしまうので、必ず1年目からやって欲しいですよね。

小椋:はい。滞在許可証の申請に必要になることもあるし、学校の奨学金とか、補助金とかを申請する時には、必ず前年度の確定申告書類が求められるので、忘れないようにしましょう。

一度申請すれば、翌年からは自動でやってくれるので!

袴田:そうですよね。初回が面倒ですが、これは義務なので皆さんお忘れなく!

本日はお忙しい中、たくさんのお話をありがとうございました。

高校を卒業してすぐの留学生活、そしてしっかりと自立して留学生活を送っている様子は、留学生だけでなく、親御さん方にも参考にしていただけたと思います。

すごく魅力的な修士課程の修了研究も、ぜひ実現するよう応援していますね!

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