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パリとリヨンの音楽院でピアノ科・伴奏科を修了し、多角的な視点で音楽を学んだフランス音楽留学。帰国後の演奏活動にも活きる音楽教育とはーピアニスト・宮川知子インタビュー♯22

皆さんこんにちは、フランス音楽留学アドバイザーの井上朋実です。

今回の留学インタビューは、日本の音楽大学を経て渡仏、パリとリヨンの音楽院にてピアノ科と伴奏科をご卒業されたピアニスト・宮川知子さんにご協力いただきました。

とても内容の濃い留学生活を送られた宮川さん。

リヨン国立高等音楽院での伴奏科の生活についても詳しくお読みいただけます。

宮川知子 Chiko Miyagawa

桐朋女子高等学校音楽科卒業し、同大学在学中渡仏。リヨン国立高等音楽院ピアノ科修士課程を 満場一致の最優秀審査員賞賛付き首席で修了。また同音学院ピアノ伴奏科においても修士を取得す る。 第14回オルレアン国際ピアノコンクール入賞。また2台ピアノで第91回レオポルト・ベラン 国際コンクール最優秀賞を受賞する他、歌曲伴奏においても第10回トゥールーズ国際フランス歌 曲コンクールにて最優秀デュオ賞を受賞するなど音楽活動は幅広い。ピアノを小川道子、竹内啓子、上田晴子、テオドール・パラスキヴェスコ、フローラン・ボファール、ローラン・カバッソ各氏に、 伴奏法を保都玲子、クロード・コレ、ダビッド・ゼーリッグ各氏に師事。 現在、桐朋学園大学嘱託演奏員。

目次

フランス音楽留学のきっかけ

上田晴子先生とデュオコンサートをさせていただいた時

井上:フランス音楽留学のきっかけについてお聞かせいただけますか?

宮川:日本で音大生だった頃、朝日文化カルチャーセンターで行われた上田晴子先生(以下:上田先生)の公開講座を聴講したのがきっかけです。

上田先生はパリ国立高等音楽院(以下:CNSMDP)でピアノ科の助教授、それから室内楽の教授を務めていらっしゃるのですが、音楽の読み解き方が素晴らしかったんです。

まさに一目惚れでしたね。講座が終わり、真っ先に連絡先を聞きに行った事を覚えています。

その後すぐ留学することを決意したのですが、最初は上田先生の勧めもあり、スコラ・カントルム音楽院でテオドール・パラスキヴェスコ先生(以下:パラスキヴェスコ先生)のクラスに入りました。

パラスキヴェスコ先生は元々はCNSMDPのピアノ科の教授で、上田先生の師匠でもあったんです。

井上:そうだったのですね!パリではどのようなことを学びましたか?

宮川:パラスキヴェスコ先生からは音楽の作り方や楽譜の読み解き方など、いわゆるクラシック音楽の伝統的な奏法を学びました。

生徒が正しい弾き方をするまで根気よく教えて下さる先生だったので、最初の8小節で1時間のレッスンが終わってしまう事もありました。

パラスキヴェスコ先生のレッスンの他に、上田先生のプライベートレッスンも並行して受けていたのですが、室内楽の教授という事もあり上田先生のレッスンはいつも立体的。

井上:立体的というのは、どういうことでしょうか?

宮川:ピアノのソロ曲のレッスンなのに、その作曲家が当時書いていた室内楽作品や、交響曲の話がポンポン飛び出て、「このリズムは彼のチェロソナタにもよく出てくるよ」とか「この左手はもっとオルガンのバスみたいに弾いてみて」といったアドバイスをいただきました。

井上:それはとても勉強になりますね!宮川さんは伴奏科にも通われたのですよね?

宮川:はい。音楽を様々な角度から解釈して演奏に活かす、上田先生への憧れもあったんだと思います。

渡仏して2年目にはソロだけでなくアンサンブルも学びたい、もっと色んな勉強がしたい!と強く思うようになり、伴奏科への興味が湧いてきました。

そこで13区音楽院で教えていらっしゃるクロード・コレ先生(以下:コレ先生)を紹介していただき、伴奏科にも通い始めました。

井上:素晴らしいですね!初めての伴奏科の経験はいかがでしたか?

宮川:フランスの伴奏科では初見能力を重視されるのですが、当時の私は初見が大の苦手。

クラリネットやサックスの生徒さんがよく伴奏科クラスに遊びに来ていたので、彼らが勉強中のソナタや協奏曲の伴奏パートを初見で演奏する訓練をさせられました。

初見が不得意の私は、冷や汗をかきながら必死に演奏していましたね。でもお陰で色んな楽器と勉強が出来て、初見能力も徐々に上がっていきました。

その後、コレ先生にサンモールにも良い先生がいらっしゃると聞き、欲張りな私はサンモール音楽院にもピアノ科で登録しました。一時はトリプルスクールをして、色んな先生と音楽を勉強していました!

井上:すごいですね!とても充実した生活を送っていらっしゃったのですね!

リヨン国立高等音楽院に入学

パラスキヴェスコ先生と

井上:宮川さんはその後、リヨン国立高等音楽院(以下:CNSMDL)に入学されましたが、リヨンに行かれたきっかけは何ですか?

宮川:はい。パリでも充実した生活を送っていたのですが、 多くの事を勉強したかった私にとって、沢山のコンサートやプロジェクトが含まれているCNSMのカリキュラムはとても魅力的だったんです。

そこでパラスキヴェスコ先生に当時CNSMDL教授だったフローラン・ボファール先生(以下:ボファール先生)を紹介していただきレッスンを受けました。

井上:どのようなレッスンでしたか?

宮川:アンサンブル・アンテルコンタンポランのピアニストでもあった、ボファール先生のアドバイスはとても刺激的でした。

レッスンでは、その時勉強中だった現代曲を中心に見ていただきました。ボファール先生は技術的なことよりも映像のイメージを言葉で伝えて下さる方です。

現代に書かれたこの緻密な楽譜を何とか正確に弾こう!と、少し窮屈な考えに偏っていた私に、『常に心とイメージを伴って演奏すること』という事を教えてくださいました。

当時、現代曲=気難しい音楽だと思っていた私にとってそれは衝撃的な出来事で、新しい世界が開けた瞬間でもありました。そしてボファール先生とならまた新たな事が学べる!と思い、CMSMDLの受験を決め、無事ピアノ科に入学することが出来ました。

井上:ボファール先生から新たな音楽アプローチを学ばれたのですね!

フランス語はどのように勉強されましたか?

宮川:日本で少し勉強した後、3ヶ月位パリの語学学校に通いました。

ただ現地でフランス人の友達と沢山話した事で一気にフランス語力が伸びましたね。なのでCNSMDLに入学した時はフランス語で困ることは特にありませんでした。

パリとリヨンの物件探し

ボファール先生門下生

井上:そこからリヨン生活が始まったのですね!お家は簡単に見つかりましたか?

宮川:パリにいた時は、知り合いの関係でお家を紹介してもらえたのでスムーズに決まりましたが、リヨンに引っ越す際はとても苦労しました。

まず、外国人というだけで現地の不動産に行っても相手にしてもらえませんでした。

そこでleboncoinというフランスの掲示板サイトで物件情報を探し、沢山問い合わせをしました。

結果的に1通だけ返信を頂いたのですが、家を借りる際に保証人が必要と言われてしまい‥。悩んだ末、先生方に保証人をお願いし、なんとか家を借りることが出来ました。

井上:フランスで働いている保証人がいないと借りられないお家は多いですよね。

ピアノはどうされましたか?

宮川:私の場合、最初パリに引っ越す時に日本から船便でグランドピアノを運びました。

井上:すごいですね!

宮川:留学当初はフランスに一生住むかもしれないと思っていたこともあります。

結果的に約10年間フランスに滞在したのですが、毎月グランドピアノを現地でレンタルすることを考えると、恐らく同じくらいの費用で済んだのかな?と思います。

ピアノ科と伴奏科に通ったリヨンでの学校生活

リヨン国立の伴奏科の集合写真

井上:慣れ親しんだ楽器で練習出来るのも良いですね。

それではリヨンでの学生生活についてお聞かせいただけますか?

宮川:まずピアノ科でボファール先生に学士課程の3年間習い、その後ボファール先生がCNSMDPの教授になられたので、修士の2年間はローラン・カバッソ先生に習いました。

ピアノ科の学士課程3年の時からはCNSMDLの伴奏科、ダビット・セリーグ先生のクラスにも在籍し、2つの科で同時に勉強していました。

ピアノ科と伴奏科で卒業試験の時期が被らないよう、伴奏科の在籍年数を短縮したのですが、単位を落としては駄目なので毎日必死でしたね。

井上:どんなスケジュールを送っていらっしゃったのか気になります!

宮川:CNSMDLは学内コンサートやプロジェクトが多い割に、伴奏科の生徒がとても少ないんです。なので色々な楽器の方や歌手の方に伴奏をお願いされたり、作曲科の生徒に初演を頼まれたり、とにかく本番が多かったですね。

凄く楽しかったし自分が望んだ環境ではあったけど、限られた時間で沢山の曲を用意するのは大変でした。

CNSMDLの伴奏科って教授は1人しか居ないのに助教授は沢山いるんですよ。

その助教授陣からオペラ伴奏、初見や移調、スコアリーディング、歌曲伴奏、チェンバロ奏法、声楽、ダンス伴奏など伴奏者に必要なスキルを同時に習います。

なので伴奏科だけで週に5回から6回はレッスンがありました。

井上:レッスン漬けの毎日ですね!レッスンの内容をお聞かせいただけますか?

宮川:オペラ伴奏のレッスンでは、ピアノ伴奏付きの声楽譜を見て、ピアノを弾きながら自分で歌います。

チェンバロのレッスンでは、Chiffrage(シフラージュ)というフランス式和声の数字を見ながら伴奏を自分で考えたりしました。

声楽のレッスンでは歌詞の発音や呼吸法を学んで歌曲伴奏に役立てたりと、様々な視点から音楽を学ぶことが出来ました。

井上:宮川さんはそれに加えてピアノのソロのレッスンも受けられていて、本当にすごいですね!

宮川:とにかく1日中学校にいましたね。

印象的だった経験について

リヨン国立でオケ中ピアノを演奏した時

井上:沢山のことを吸収されたのですね!

それではリヨンの学生生活で印象的だったことはありますか?

宮川:ピアノ科の学士2年の時、作曲科の試演プロジェクトにオーケストラ内のピアニストとして参加しました。

それまで指揮者を見ながら演奏した事なんて一度も無かった私にとって、それは生まれて初めて体験する混沌とした時間でした。

井上:ピアニストの方がオケ中で演奏することは珍しいですもんね!

宮川:はい。まず指揮棒の見方が分からなかったんです…。しかも現代曲という事もあり、変拍子しかありませんでした。

さらに曲中にはピアノの特殊奏法が沢山あり、弦を引っ掻いたり、弦の上に自宅の鍵を落とすといった事もしました。

その上、他の楽器も特殊奏法ばかりだったので、皆が何を弾いているのかさっぱり分かりませんでした。

それでもリハーサルを重ねる内に曲には慣れてきたのですが、本番では緊張していた事もあり、一瞬の隙に何処を弾いているのか分からなくなってしまい…。

初演を楽しみにしていた作曲家の方には大変申し訳なかったのですが、大失敗をしてしまいました。

その後、もう二度とこんな失敗はしない!と誓った私は、指揮者の友達に付き合ってもらい、トレーニングを開始しました。どのように指揮を見れば良いのか、どのタイミングで音を出せば良いのか、などの練習をしたんです。

その後もなるべく多くのアンサンブルプロジェクトに参加し、学生の間に多くの指揮者と演奏する機会に恵まれました。

伴奏科の最後の年にはストラヴィンスキーのペトルーシュカをCNSMDLのオーケストラと演奏させていただきました。自身の成長を感じ、とても嬉しかったのを覚えています。

帰国後の活動

リヨン国立の演奏会でペトルーシュカのピアノ奏者を務めた

井上:まさに留学の集大成ですね!

それでは帰国されてからの活動を教えていただけますか?

宮川:帰国して最初のお仕事は、ミュージカルの音楽監督のお仕事でした。譜面が読めない役者さんに譜面の読み方や歌い方を指導するという内容です。

現在はオーケストラ内のピアニストとしてエキストラのお仕事をいただくことが多いです。

また桐朋学園大学で弦楽器の伴奏員を務める他、子供向けのアウトリーチコンサートで企画から演奏までを行っています。

最近は編曲をすることも増えましたね!

井上:伴奏科で学ばれた経験が生かされていらっしゃいますね!

フランスに音楽留学したい人へのメッセージ

リヨン国立のピアノ科卒業試験の後

井上:それでは最後に留学したい人へのメッセージをいただけますか?

宮川
:留学はとにかく勇気が必要だと思います!

行ってみたいと思ったら、まずはその国に旅行してみたり、短期の講習会に参加して、その場所で自分が勉強しているイメージをしてみると良いかもしれません。

最初は細かいことを考えずに、金銭的な用意が出来たらまず行ってみて、現地での縁を大切にすると良いと思います!習いたい先生も一人に絞るのではなく、柔軟に対応する事も大切だと思います。

井上:留学前に進路を絞らなくても、現地での縁で様々な経験に繋がっていくのですね。

貴重なお話をありがとうございました!

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