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留学中にバロック音楽に魅了され、フランスで活動中!ーヴァイオリニスト・萩原茜インタビュー #05

皆さんこんにちは、Music Discoveryアドバイザーの袴田美帆です。

今回は、パリ国立高等音楽院を修了後、フランスを拠点にバロック・ヴァイオリン奏者として演奏活動をされている、萩原茜さんにお話をお伺いしました。

フランスに留学するまでの経緯や、バロック音楽の世界に入ろうと思ったきっかけ。
実際にパリに来て、困った体験談も。
そして、留学後もフランスに残って活動しようと思った決め手は・・?

フランス留学を考えている皆さんや、現在留学中の皆さんにも、きっと参考にしていただけることがあるはずです。ぜひ最後まで読んでみてくださいね!

萩原 茜 Akane Hagihara
同志社女子大学学芸学部音楽学科卒業後、パリ・エコールノルマル音楽院に入学。演奏高等課程ディプロムを審査員満場一致で修了。また渡仏後古楽演奏に魅了され、パリ国立音楽院バロックバイオリン科に入学。フランソワ フェルナンデス、ステファニー•マリー ドゥガンの各氏のもとで研鑽を積み学士、修士課程を修了。
これまでにモダンバイオリンを久保由佳子、山本裕樹、イゴール ヴォロシン、ステファニー•マリー ドゥガンの各氏に、バロックバイオリンをフランソワ フェルナンデス、ステファニー•マリー ドゥガン、クリストフ ロベールの各氏に、室内楽をケネス ヴァイス、ジョン・ルックオの各師に師事。
現在パリを拠点にLes Ambassadeurs〜 La Grande Ecurie、 Les Musiciens de Saint-Julien、 La Diane Française、 ベルサイユ王室オペラ管弦楽団などのバロックオーケストラで活動中。

フランスに留学しようと思ったきっかけは?

6年住んだパリのアパートから

袴田:まず、留学したきっかけを教えてください。

萩原:留学のきっかけは、大学4年生のときにカリアリ夏期国際音楽アカデミー夏季講習に行って、そこで出会った先生に習いたいなと思ったので、その時からやんわり留学というものを視野に入れ始めました。

でも留学って、国際コンクールをいっぱい取ってる子とかがするものだと思ってたので、私が行ったところでやっていけるのかな?ってずっと思っていました。

袴田:留学を考えるにあたって、周りの人とかは応援してくれましたか?

萩原:一応協力的ではありました。学校の周りの先生からも、どこか他の世界を見てみたら?という勧めもあったので、背中を押してくれたのかなと思います。

目次

留学準備で困ったこと

コンサート後の打ち上げは必須です!

袴田:4年生の夏から留学を考え始めたとのことですが、留学準備で困ったことはありますか。

萩原:4年生の夏に留学しようって思い始めたので、まずフランス語は全く勉強していませんでした。大学のときは第2言語としてドイツ語を取っていたので…

そこから留学をしている人とか、留学したことがある人とか、その知り合いを伝って、どういう準備をしたかを、聞き始めました。

結局夏に講習会に行って、本当に行こうと決めたのが、3月に卒業する間際でした。当時はMusic Discoveryさんのようなサポートは身近になかったので、ブログにまとめてある情報を読んで…そのときに初めてビザを申請したり必要書類を準備するのに、領事館や大使館に行かなければいけないことも知ったんです。

さらに、ビザの申請にはフランス語でモチベーションレターを書かなきゃいけないことや、自分のプロフィールをフランス語にしなきゃいけないことも知って、慌ててフランス語レッスンの申し込みに行きました。

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袴田:その当時、あったらよかったなというサポートは何かありましたか?

萩原:フランス語のモチベーションレターや、プロフィールの書き方もそうですし、あとはやっぱり家探しのサポートは必要だったなと思います。

当時、大手の斡旋業者は知っていたのですが、とても高くて手が出せませんでした。
でも、自分では何もわからなかったので、比較的割安な斡旋業者を探して、日本から契約しました。もちろん内見にも行かずに決めてしまったので、あまり綺麗じゃなくて、ネズミも出るような家だったんです。

パリでネズミはつきものとは言うけれど、やっぱり来て1週間でネズミに遭遇すると、ちょっとメンタル的にもきつかったです・・
1階がレストランだったから、というのもありますが、斡旋業者はそんな情報は教えてくれませんでした。
だから、現地で実際に内見にも行けて、一緒に決めてくれるような人がいたらよかったなと思います。

バロック・ヴァイオリンについて

鏡の間でのコンサート

袴田:茜さんは現在、バロック・ヴァイオリン奏者として、活動されていますが、バロック音楽に興味を持ったきっかけは何ですか。

萩原:フランスに来て習った先生が、モダン楽器とバロック楽器の二刀流で演奏される方で、バロック音楽やバロック楽器がすごく身近に感じたのが始まりです。

最初に通ったパリ・エコールノルマル音楽院のプロジェクトの一環で、バッハのカンタータをバロック弓で演奏するっていう機会があったんです。

そのときに、ピリオド奏法がヨーロッパには浸透しているんだなっていうのを感じました。また、同じコンサートホールで、クラシックのオーケストラと同じようにバロックアンサンブルも演奏しているのをみて、バロック音楽が本当に身近に感じられました。そのときに魅了された「ヒストリカル演奏」を私も勉強してみたい!と思うようになり、パリ国立高等音楽院(以下CNSM)の古楽科を受験しました。

フランスでキャリアを積むという選択

ロックダウン中で人がいなかったベルサイユ宮殿の庭

袴田:そうだったんですね!その後、茜さんがフランスに残って仕事をしようと思った理由はなんですか?

萩原:フランスには本当にたくさんのバロック音楽のアンサンブルが存在していて演奏の機会も多いことと、ヴェルサイユ宮殿をはじめ、バロック音楽が実際にその時代に演奏されていた場所でも演奏ができることです。また、文献や楽譜も手に入りやすく、研究をする環境が整っていることも理由の1つです。

袴田:やはり当時の場所で、当時の編成で演奏するっていうのは、ヨーロッパでしかできないですよね!
茜さんは、今までの留学中に悩んだことや困ったことはありますか。

萩原:やっぱりパリ音楽院にフランス人が多いのは当たり前で、そのときに、私が今まで育ってきた日本での人との距離感とは違うなっていうところに悩んだことがあります。

フランスにはフランスでのコミュニケーションの取り方っていうものがあって、でも程よい距離感をとる、日本人としてのアイデンティティも失いたくない。

でもフランスではコミュニケーションを取ったもの勝ちな国でもあるから、真面目に練習して1人で孤立していてもあまりいい印象はないんです。

せっかく仕事に呼ばれたとしても、孤立していると次に繋がらないから、自分からコミュニケーションの輪に入っていくことに、最初は苦労しました。

アーティストの失業保険?フランス独自のアーティスト支援制度「Intermittents du  spectacle」

モンテカルロ、春の芸術祭での公演

袴田:茜さんの現在の活動と、フランス独自のアーティスト支援制度(Intermittents du spectacle)について簡単に教えていただけますか?

萩原:はい、今の活動はIntermittents du spectacleという制度を活用し、フリーランス奏者として、いろんなバロックオーケストラで演奏活動をしています。

このシステムは、毎月安定した収入を得るのが難しいフリーランスのアーティストの職業を、フランス政府が保証するという、ありがたい仕組みです。

断続的な仕事の仕方をしている人(アーティストや俳優など)に対して、その人の月収を安定させるシステムで、仕事が少なかった月に、月ごとの失業保険みたいな感じで、お給料がプラスで振り込まれます。
ヨーロッパでもこのシステムがこんなに普及しているのは、フランスだけです!

これから留学したい人へのメッセージ

パリ音での修士試験

袴田:最後に、これから留学してみたい!と思う人たちにメッセージをお願いします。

萩原:やっぱり異国の地に行くと思うと、その国の文化だったり、言語だったり、不安になることもたくさんあると思います。

私も最初はそうでしたが、フランスで生活する中で学んだことや、感じたことは、今の自分の演奏の糧になっています。

それに、私がバロック音楽の世界に魅了されたように、新しい世界に出会えるかもしれません!なので、もし少しでも迷っている方がいれば、私は全力で背中を押します!

袴田:今日は貴重なお話をありがとうございます!

実は茜さんとはCNSMの同期で、私の留学生活にもたくさんの刺激を与えてくれた、大切な留学仲間なんです。

最初に苦労したという家探しや、フランスで音楽家として生きていく方法、そしてアーティストの失業保険の制度のお話は、きっとたくさんの人が欲しかった情報だと思います。

茜さんの今後の活動も楽しみにしていますね!

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