皆さんこんにちは、Music Discoveryアドバイザーの吉田佐和子です。
今回は、パリ地方音楽院を卒業後、帰国して一般企業に就職しながらピアニストとしての活動を続けておられる、白井万椰さんにお話をお伺いしました。
留学当初に困ったことや、3年間のフランス留学生活で得られたものは・・?
また、一般企業への就職を踏み出した思いや、就職活動での苦労話もお伺いしました。
留学後のキャリアに迷っている方や、仕事方法が不安な方に、きっと参考にしていただけるはずです。
白井 万椰 Maya Shirai
神戸女学院大学音楽学部卒業後、渡仏しパリ地方音楽院に入学。2年研鑽を積みディプロムを取得。その後スコラ・カントルム音楽院に入学し、翌年審査員満場一致の首席で卒業。2016年帰国。
株式会社リクルートへキャリアアドバイザーとして入社し、新人賞、MVP等複数受賞。現在は株式会社RENEWにて、ミュジキャリ事業部マネージャーとして音大生・音大卒業生の就活・転職支援を行いながら、精力的に演奏活動も行う。これまで、日仏文化協会フランスピアノコンクール第2位、スペインにてオリフエラ国際フォーラム音楽コンクール第1位、日本演奏家コンクール一般の部第1位等多数受賞。
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留学へと繋がった、講習会への参加
吉田:留学のきっかけを教えてもらえますか?
白井:私は中学生ぐらいのときからフランス音楽がすごく好きで、専門的に勉強したいなっていう思いがあって。いずれ留学したいな、っていうのはぼんやりと考えていました。
そこから大学に入って、大学3年の夏休みにフランスの講習に参加して、そのときにお会いしたレッスンに衝撃を受けまして、フランスに行きたいなという気持ちが固まったときに、先生からもうフランスに来ないの?っていうお誘いをいただいて、留学を決心しました。
吉田:なるほど。ちなみにその先生はどうやって決められたんですか?
白井:最初は全くわからなかったので、講師のサイトを見て、その方の経歴だったりだとか、どういった分野を得意とされているかなど調べて決めました。
その当時は、講習会中にWレッスンができたので、講習会中は、同じ期間に2人の先生に習っていました。
吉田:なるほど、それもまた勉強になりますよね。その後大学を卒業したらすぐフランスに行こうと準備されたんですか?
白井:そうですね。講習会中に連絡先をお聞きしていたので、入試前にコンタクトを取り、卒業後の半年間で留学準備をしました。
卒業後、フランス留学へ向けての準備
吉田:半年間で留学の準備をされたとのことですが、講習会で教えてもらった先生がいらっしゃる学校を目指されたんですか?
白井:そうです。オリヴィエ・ギャルドン先生っていう方のクラスで。
吉田:フランス語や試験の準備はどのように進めていかれましたか?
白井:言語に関しては、元々大学で第2言語にフランス語を選んではいたんですね。それと、フランス人の先生の個別レッスンにも留学前通っていました。
でも、留学する時は全然話せる状態ではなかったので、そこから2、3ヶ月ぐらいかけて在籍に必要なB1(※フランス語能力試験のレベル)を取得しました。
吉田:入試は長期渡航前、事前に一度行かれたんですか?
白井:私が受けた時は、新学期(9月)が始まってから入試があって、課題曲も割と直前に分かるシステムでした。
フランスでの住居探し、音楽院入試の準備
吉田:そうなんですね。では試験の1ヶ月くらい前に行って準備という感じでしたか?
白井:そうですね。日本にいる時に、フランスに留学経験のある先生にコンタクトを取ったら、音楽を学んでいる学生向けの寮みたいなところを教えていただいて。
そこを確保して、ピアノレンタルもして練習できる状態にしてから留学を始めました。
なので、試験課題曲が分かったときには、向こうで練習環境が整っている状態でした。
フランス留学に必要なサポートについて
吉田:実際に留学の準備をする中で先生のサポートもあったと思うんですが、大変だったことはありますか?
白井:始めは色んなシーンで、どういうふうに支払いするかとか、決まりごとがどうだとか、そういったメールも来るんですけど、やっぱりわからないですし、そのやり取りで大事なことを理解できてるかっていうのはすごく不安でした。
あと、学校を受ける際に先生とのメールのやりとりをしている時も不安でしたし、情報をいただいてもそれがちゃんと反映できているのかとか、すごく苦戦しました。
吉田:確かに自動翻訳ツールを使えば、大体の意味はわかったりするんですけど、それで合ってるのかっていうサポートは欲しいですよね。
白井:はい、確信を持てるってめちゃくちゃ大きいと思いますね。
たまたま私は、住むところとか、学校も決まっていたからよかったんですけど、それも知らなかったら、どうやって見つけたらいいかさっぱりわからなかったし、先生の選定基準とかもわからないので、もし全部自分でやらなきゃいけなかったら、留学できてなかっただろうなって思います。
3年間の留学生活を振り返って
吉田:留学中の3年間は、ずっとパリ地方音楽院で学ばれていたんですか?
白井:パリ地方音楽院は2年で卒業して、その後同じ先生に、私立のスコラ・カントルム音楽院でもう1年習っていました。
地方音楽院では、年齢的に私が卒業しないといけなくて、でもまだその先生と学びたいなって思いがあったので、学校を移ってもう1年学んだという感じです。
吉田:なるほど。ピアノ科以外でも学ばれたのでしょうか?
白井:そうですね。もともと私はハープもやっていて、フランスでも個人レッスンを受けていました。フランスはハープの本場だったりするので、続けられて良かったです!
吉田:留学の期間について、2、3年で帰ろうというのは、もともと決めておられたんですか?
白井:そうですね。元々このパリ地方音楽院の課程が2年、というのもあり、長くても3年ぐらいかなと考えていました。
留学中、レッスンなどもして、向こうでも生活ができるくらいにはなったのですが、やっぱり日本で活動したいなっていう思いがあったので、ビザは伸ばさず日本に帰国しました。
音楽留学したのに就職活動?留学して変わった自分のキャリアへの思い
吉田:なるほど。帰国後の仕事をどうするかを考えられたときの心境や、キャリアの歩みはどんな感じで決められたんですか?
白井:留学に行ったことで、いろいろと自分の考え方とかも変わって、日本についてのその文化であるとか社会についての理解の浅さをすごく感じまして、なんかやっぱ自分が日本人であるからこそ、社会に出て、どういう仕組みになっているのかとか、何かそういったことを知っていきたいなっていう思いが強かったです。
でも帰国してすぐはまだ迷っていて…音楽活動をしながら、高校に入って音楽を教えていたんですけども、教えることがすごくやりたいことではないなって感じていた部分もあって。
それで、日本で一度社会人として経験を積んで、いろんなことに挑戦したいなっていう思いもあったので、音楽活動は継続したいけど、普通の社会にも1回飛び込んでみよう!というふうに思って半年後くらいに就職活動をしました。
吉田:就職活動をされてみてどうでしたか?
白井:それが全く受からなかったんですよね。やっぱり未経験で27歳とかだったので。
でもとりあえず何でもいいから仕事したい!っていうモチベーションで片っ端から受けていって、2社だけ書類通過して。2社とも内定をいただいて、そのうちの1社のベンチャー企業(プロダクトのデザインの会社)に入社しました。
入社した会社が早くも倒産!転職、そして演奏活動との両立
白井:ですが、その会社が1年半で倒産してしまったんです。なんか何もわからないまま入社したのですが、本当に立ち上げの会社だったんですね。立ち上げと終わりを見るという経験をしました。
吉田:なるほど。そこから転職活動をしてリクルートに?
白井:そうです。たとえ1年半でも、社会人経験があるということが転職活動を後押ししてくれました。
吉田:リクルートに入られてからピアノとの向き合い方に変化はありましたか?
白井:やっぱり両方続けようとは決めていたので、働きながら演奏活動をする、というのは揺らぎませんでした。
自分自身も、学んできたことを先生や親に恩返ししたい気持ちもあったし、引き続きコンクールに出たりとか、演奏会したりっていうのを、もう無理やりにでも入れるようにしていました。
吉田:なるほど。今もずっと続けておられるんですか?
白井:はい、来月もコンサートがあります!
留学したい人へ向けてメッセージ
吉田:最後に、留学したい方に向けてメッセージをお願いできますか?
白井:留学経験っていう音楽に対する学びはもちろんなんですけども、自分の人生の考え方とか価値観とかも本当に変わる大きな経験なんですね。
その土地の文化とか、人とか、言葉とか、そういったとこに触れて生活して、新しいことに挑戦することや、そこで発見できることっていうのが、とても貴重な機会だと思うので、ぜひチャンスがあるならば、もう1人でも多くの人に飛び込んで、勇気を出して挑戦してほしいなと思います。
吉田:ありがとうございます!ご自身も、音楽を学ぶために留学したフランスで、ご自身のキャリアに繋がる新たな価値観を得られたんですね。
一般企業で社会と向き合いながら、演奏活動も続けていらっしゃる白井さん。今後の活動もますます楽しみです!