皆さんこんにちは、Music Discoveryアドバイザーの吉田佐和子です。
今回は、一般大学を卒業後、情報ゼロからフランス音楽留学生活を実現されたピアニスト、古川幸季さんにお話をお伺いしました。
音楽院探しから、入学したクラスでの苦労話、そして、留学生活が楽しい!と思えるようになった現在まで・・
周りに留学経験者がいなくて困っている方や、自分に音楽留学ができるのか不安に思っている方にとって、参考になるお話をお聞きしました。
古川幸季 Yuki Furukawa
三重県伊賀市出身。東京学芸大学初等教育教員養成課程音楽選修卒業。その後パリ・エコールノルマル音楽院に留学。現在、リュエイル=マルメゾン地方音楽院スペシャリセ課程にてJean-Baptiste FONLUPT氏のクラスに在籍中。
MusicAlp夏期国際音楽アカデミーに参加し、選抜コンサートに出演。第24回長江杯国際音楽コンクール第1位、伏せて中国駐大阪総領事賞受賞。ポーランドシレジアフィルハーモニー管弦楽団と共演。
これまでに、嶋名真理、山田つづみ、甲斐環、野田清隆、真宮恵美、Bruno Riguttoの各氏に師事。室内楽をPaul Montag、Michel Moraguesの各氏に師事。
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一般大学からフランスに音楽留学をしたきっかけは?
吉田:留学のきっかけを教えていただけますか?
古川:大学3年生のときに、全然音楽とか関係なく、1人でフランスに旅行に行ったんです。
それまでもずっと、いつかフランスに行ってみたいなと思っていて。
知り合いもいないし大丈夫かなって不安だったんですけど、泊まったところがドミトリーみたいなところで、共同生活するところだったんですね。
1人でもすごい楽しくて、街の人とかもすごく親切にしてくれて、やっぱりもう1回来たいなと思ってそのときに留学を決めました。
やっぱり、そこでコンサートとか美術館とかたくさん行って、ここで音楽をやりたいなと思ったんです。
吉田:大学は音大でしたっけ?
古川:いや、東京学芸大学の教育学部でした。
吉田:なるほど。フランスで音楽をやりたい!と思われたあと、そこから留学の準備をもう始められたのですか?
古川:とりあえずフランス語をやってみようかなと思いました。
1、2年生は選択科目でドイツ語だったので、本当に全くわからない状態だったんですけど、大学3年生の秋にフランス語の授業をとっていたのですが、大学4年のときにコロナが流行っちゃって、留学に行けるか分からない状況になってしまいました。
音楽の勉強をもう少し続けたかったので、日本の音大受験も考えたりしましたね。
なので、4年生の夏ぐらいまでは、音大受験の方の準備をしていたのですが、ちょうどその時に留学に行けそうな兆しが出てきたんです。春の時点では、コロナで留学は無理かなっていう状態だったんですけど。
やっぱり自分がやりたいことは、音大に行くっていうことより、フランスで音楽を勉強することだったので、そのタイミングで先生を探し始めたりとか、いろいろ準備を始めました。
コネクションはゼロ。苦戦した先生探し
吉田:師事する先生などはどのように探されたんですか?
古川:それがフランスに行くまでちゃんと先生が決まってなくて。
大学の先輩も、誰もフランスに留学してる人とかいらっしゃらなくて、繋がりも全くなかったのですごく大変でした。
最終的に大昔に習っていたピアノの先生に連絡したら、たまたまパリ・エコールノルマル音楽院(以下=エコールノルマル)に留学していた人と繋がることができたので、留学準備の仕方や、どんな学校があるか、受験の方法とか、どれぐらいお金がかかるのかとかも聞きました。
その中でも習いたいな、という先生はいて、連絡もしたんですけど、なかなか返事が返ってこなかったんです。
そんなことが続いたので、とりあえずフランスに行ってみたら、あとはなんとかなるかな!みたいな感じで行きました。
吉田:すごいですね!
古川:とても大変でしたが、とりあえずエコールノルマルを受けようと思って、学長さんにこの先生のレッスンを受けたくて…って言ったら、その先生はあんまり学校に来られないから、他の先生を薦められました。
吉田:そんなふうに自力で頑張って、何度もアタックされながら、準備を進めていかれたんですね!
古川:そうですね、あんまり上手くいってないかなと思うんですけど…
吉田:いえいえ、そんなことないと思いますよ!実際にフランスに行かれると、情報量もすごく変わったりすると思いますし。
古川:今考えれば、やっぱり講習会とかに行って、先生とアポを取ってやるのが一番スムーズに行くのかなと思いますね。
入学してからも苦労の連続、そして2年目の転機
吉田:少し話を戻すのですが、1年目はエコールノルマルに入って、学長先生からおすすめされた先生のクラスに入学されたんですか?
古川:はい。日本人のすごい優秀な生徒さんがたくさんいるようなクラスに入れていただいて。
本当はここに2年行って、帰国しようと思ってたんですけど、その先生が私には厳しいというか、周りのレベルもとても高く自分の未熟さと常に比較してしまって、ちょっと精神的にきつくなってしまいました。
技術的には成長もしたし、先生が教えてくださることもすごい素晴らしくて、とてもいい経験にはなったんですけど、せっかくフランスまで来たのに精神をすり減らしながら音楽を続けていて、自分の学びたいことはこれでいいのかな?と思って。
学費も公立の音楽院に比べたら結構かかりますし、2年目に他の音楽院に行くことを考え始めました。
エコールノルマル1年目の実技試験には無事合格したので、エコールノルマルの先生には、DEM (フランス音楽研究資格)を取りたくて、他の音楽院に行きたいですとお伝えして、その先生が紹介してくださった、リュエイユ・マルメゾン音楽院を受験することにしました。
吉田:なるほど。丁寧にご自身の意思をお伝えになったのは素晴らしいですね。
では今の先生に習って、2年目くらいかと思いますが、先生が変わっていかがですか?
古川:そうですね。やっぱり自分のやりたい曲とかが学べているので、のびのびできてますね。
1年目は試験曲がたくさんあったので、全部先生に指定された曲だけをやる!みたいな感じだったのですが、今は好きな曲と、先生が提示する曲、半々ぐらいでできています。
吉田:それは良かったですね!ちなみに今後も、もうちょっとフランスで勉強したいと思っていますか?
古川:あと1年で帰る予定です!
今年でDEMが取れることが分かったので、キリがいいかなっていう。
やっぱりやりたいことってずっとあるんですけど、フランスにずっと永住したいっていう気持ちはあまりないので、キリのいいタイミングで帰ろうかなと思っています。
吉田:現在学んでおられることを聞かせていただけますか?
古川:1年目の学校が、ピアノと室内楽、初見の授業だけだったのですが、今の課程は選択できる授業が多くて。
できるだけたくさんの授業を取ろうかなと思ったので、ドイツリートの伴奏だったりとか、アナリーゼとか、そういう授業を学んでます。
自分は音大を出てなかったので、そういうことを積極的に学ぼうかなと思って取ってます。
一般大学出身ならではの悩み、サポートしてほしかったこと
吉田:音大を出ていおられなかったことで大変なことはありましたか?
古川:やっぱり知り合いがいなさすぎる!フランスに来てすぐのときは、まわりはみんな、先輩とか、同級生とか、留学仲間とか、その辺で情報共有とかしてるのを見ていて、羨ましいな、と思いました。
でもフランスに来てからは、少しずつ日本人の先輩や同級生に出会えたり、フランス人や他の国の友達もできたりして、みんなとても良い人ばかりでたくさん助けていただきました。
吉田:もし留学準備をする際に、こんなサポートあったら嬉しかったな、という内容はありますか?
古川:書類関係の手続きですかね。自分でビザの更新とかまではできるんですけど、やっぱりうまくいかないことってたくさんあって。
どこかから返事が全然来ないとか、まだ私も社会保険番号を2年ぐらいもらってない状態ですし、何かあったときにどこか頼れるところがあればいいなって思います。
留学したい人へメッセージ
吉田:最後に留学を迷ってる人に向けて、メッセージをお願いします。
古川:今迷ってる人がいたらぜひ留学してほしいなと思います。私は大学卒業して就職して、しばらくしてフランス行こうかなとか思ってたんですけど、やっぱり大学卒業してすぐフランス来て良かったと思っています。
フランスには学生料金でいけるコンサートとか、若者料金で経験できることがたくさんあるので、20代前半の年齢だと、気軽にたくさんの芸術に触れられるんです。
私の両親も、若いうちに留学を経験した方がいいんじゃないかって応援してくれたので、とても感謝しています。なので留学できる環境があるのなら思いたったときに留学した方がいいかなって思います!
吉田:素敵なメッセージをいただきありがとうございます!音大出身の方でなくても「音楽を学びたいからフランスに行く」という選択肢が、これからもっと身近になっていくような気がしました。
古川さんの、環境に左右されず「やりたい!」と思ったときに動ける、その行動力は素晴らしいですよね。
今回は色んなお話を聞かせていただき、ありがとうございました!