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作曲科からフランスの伴奏科へ。「完全なる音楽家」を目指し、研究は続くーピアニスト・作曲家 秋山友貴インタビュー #13

こんにちは。フランス音楽留学アドバイザーの袴田美帆です。

今回は、現代音楽の分野でフランスと日本で引っ張りだこの、ピアニストであり作曲家・秋山友貴さんにインタビューさせていただきました。

秋山さんは、東京藝術大学大学院作曲専攻修士課程を修了後、パリ国立高等音楽院のピアノ伴奏科修士課程に入学、現在はパリ国立高等音楽院の伴奏員として勤務されています。

留学後すぐにコロナ禍になってしまったにもかかわらず、充実した留学生活を送られた秋山さん。

幼い頃から新しい音楽が大好きだったという、素敵なエピソードもお読みいただけます!

秋山 友貴 Tomoki Akiyama
東京藝術大学音楽学部作曲科を経て、同大学院修士課程作曲専攻を修了、大学院アカンサス音楽賞を受賞。2019 年より渡仏し、パリ国立高等音楽院ピアノ伴奏科修士課程に審査員満場一致で入学、最優秀の成績で卒業。またスコラ・カントルム音楽院ピアノ科ヴィルトゥオーゾ課程を審査員満場一致で修了。広い編成にわたる作編曲作品は国内外で演奏されており、またピアニストとしてもソロ、伴奏、室内楽等さまざまな分野で活動、特に同時代音楽の演奏に積極的に取り組んでおり、多くの作曲家から高い評価を得ている。
現在パリ国立高等音楽院指揮科及びオンド・マルトノ科伴奏助手を務める。AKIYAMA Quartet、Ensemble Toneseekメンバー。
Soundcloud

目次

音楽との出会い

マティアス・ピンチャー指揮アンサンブル・アンテルコンタンポランの公演でチェレスタとシンバルを持ち替え

袴田:秋山さんは、東京藝術大学(=以下藝大)の作曲科からパリ国立高等音楽院(=以下CNSM)の伴奏科へ進まれて、留学当初からあちこちで活躍されていますが、どんな感じで音楽を始めたのですか?

秋山:はじめは母親が趣味でピアノを習っていて、それをずっと見ていたのですが、ある日、勝手に私も同じ曲を弾こうとしていたみたいで。

そうしたらだんだんとピアノが楽しくなって、グループレッスンから習い始めました。

袴田:秋山さんにもそんな時代があったんですね。それは何歳のときですか?

秋山:5歳ぐらいですね。でもその後すぐに引っ越して、そこで初めて個人レッスンに通い始めました。

個人レッスンと言いつつも、当時(6歳くらい)は全く練習しないし、渡された楽譜じゃなくて自分で勝手に曲を作って自由に弾いていたので、その先生には早々に見放され(笑)

ちょうど近くにいらっしゃった、愛知県立芸術大学の作曲科出身の先生を紹介してくださり、その先生に大学受験が終わるまでお世話になりました。

袴田:そうだったんですね。きっと最初の先生は、すぐに秋山さんの才能に気づいて、早くから羽ばたけるようにしてくれたんでしょうね!

秋山:どうですかね。でも、この先生との出会いが、結局作曲への道には繋がっています。

作曲科での7年間、そしてフランス留学へ。

現代アート作家クリストとジャンヌ=クロードによるインスタレーション、L’Arc de Triomphe, Wrapped (梱包された凱旋門)

袴田:作曲科出身の先生のもとでピアノを習いつつ、藝大では作曲科に進んだ秋山さんがフランス留学に行くまでの経緯を教えていただけますか?

秋山:藝大の作曲科に入ったときから、何となくいつか留学したいなっていうのは頭にありましたね。藝大作曲科は、フランスのアカデミズムにすごく影響を受けていて、フランスへ留学された教授も多いんです。

自分が師事した野平一郎先生も、CNSMで勉強されて、長い間フランスで活動されていましたし、たまたま副科ピアノの先生だった長尾洋史先生も、パリのエコール・ノルマル音楽院出身だったりと、フランスがとても身近にあったんですよね。

あとは純粋に、小さい頃からフランス音楽が好きだったのももちろんあります。

袴田:ピアノに作曲、今までの色んな経験が、藝大で形になっていくのが伝わってきます!

秋山:あと、小さい頃から、新しい音楽に対する興味や好奇心がものすごく強かったかもしれない。

まず新しい楽譜を買ったら、すぐに最初から最後まで全部弾いていましたし、祖父母としょっちゅう楽譜屋さんに行っては、何時間も待たせていましたね。

それで、作曲科の受験を決めたのも、現代音楽は一度も書いたことがなくて、よく知らない世界だけど、それがかえって面白そうだなと思って。

袴田:新しい音楽への興味が、必然的に秋山さんを現代音楽の世界に導いていったのですね!

作曲科は修士課程まで進まれて、その後フランスへ行かれたのですか?

秋山:はい。修士課程って普通2年なんですけど、作曲科は修了作品に論文にとても忙しいので、3年在学する人が多いんです。

なので、私も学士課程4年+修士課程3年=7年間藝大の作曲科にいました。

CNSMは、藝大を卒業した翌年に受験したので、4月から受験の2月ぐらいまでは、日本で演奏の仕事をしていました。

袴田:そうなんですね!ちなみにそれは何歳のときでしょうか?

秋山:25、6歳のときです。

野平先生をはじめ、周りの先生にも大学生の頃から「一体いつになったら留学行くんだ?」と言われ続け、ようやく受験した感じです。

袴田:そこではどうして伴奏科を受けようと思ったんですか?

秋山:もちろん、作曲に興味があって藝大に入ったんですが、作曲することが楽しい!というよりも、やっぱり一人で曲を書くというのは孤独な作業なので、結構しんどい辛い時もあったんですよね。

そんな中、ピアノが弾ける作曲科の人たちって、同級生をはじめ色んな人に伴奏を頼まれることも多くて、私自身も学生時代、作曲している時間より誰かと一緒に演奏をしている時間の方が結果的に長かったんです。

袴田:そうだったんですね。

秋山:藝大の作曲科やソルフェージュ科には、フランスのピアノ伴奏科出身の先生方も多かったので、自然と伴奏科に親近感が湧いていましたね。

袴田:さすが藝大ですね!日本にいたら「伴奏科って何?」っていう学生さんも多いと思います。

そんな秋山さんが、フランス留学することになったのは何年の頃ですか?

秋山:2019年9月です。ちょうどその後すぐにコロナ禍になってしまいましたが・・・

伴奏科について

アンサンブル・ユリシーズとアンサンブル・アンテルコンタンポランの合同演奏会@ポンピドゥー・センター

袴田:コロナ禍と共に始まった伴奏科での留学生活ですが、伴奏科には何年いらっしゃいましたか?

秋山:伴奏科は3年やりました。CNSMの中では珍しく、コロナ関係なしに修士課程が1年延長できる学科なんです。

2020年の3月から夏までは学校も閉まっていたし、新年度からも隔週でオンライン授業が続いたので、これで卒業するのはもったいないと思い、1年伸ばしました。

袴田:そうですよね。秋山さんが、伴奏科で学びたかったことは何ですか?

秋山:これは難しいですね。

伴奏科は、演奏技術だけじゃなくて、自分が出来る仕事の可能性や、音楽家として活動するのに必要な能力全般が鍛えられる学科なんです。

フランス語でいうと「Musicien complet=完全なる音楽家」を目指すところですかね。

つまり演奏はもちろん、音楽や文化全般に関する教養があり、作曲や編曲などの創作活動や教育など、あらゆる側面において高い次元で音楽との関わりを持てる人材というのを理想としています。

そういった音楽家の理想的なありかた、というのは西欧音楽における伝統的な態度のひとつで、CNSMももちろん例外ではなく20世紀以降も作曲科と同時にピアノ伴奏科でも学んだという人がいっぱいいます。

ドビュッシーが最初にちゃんと評価されたのも、ピアノ伴奏科なんですよ。

袴田:そうだったんですね!

秋山:多くの著名な作曲家や演奏家を世の中に送り出した、20世紀最大の音楽教育家といってもいいナディア・ブーランジェは、CNSMのピアノ伴奏科の教授でもあったし、その後任になったアンリエット・ピュイグ=ロジェも素晴らしい作曲家で、また彼女は晩年藝大をはじめ日本のいろんな音大で教鞭を執っており、その教えは今でも受け継がれています。

現在、伴奏科修士課程の教授を務めていて、私が師事したジャン=フレデリック・ヌーブルジェ、またアシスタントを務める大津由美先生も同じく二人とも作曲家としての顔も持っています。

つまりCNSMの伴奏科というのは伝統的に、第一線で活躍する優れた演奏家であるのはもちろん、古楽から現代音楽まであらゆる様式に関する幅広い知識と豊かな経験を持っており、理論と実践両面から高度な教育を提供できるような、そういった教師陣によって支えられてきたといっていいと思います。

フランスの、特にCNSMの器楽伴奏科で求められる能力、たとえば移調、スコアリーディング、即興や伴奏付け、トランスクリプション(編曲)、室内楽、オケスタ(アンサンブルやオーケストラ内のピアノパート)、等々世界的に見てもちょっと過酷とも言えるぐらい多くの学習内容というのは、そういった伝統からしてみれば不思議ではありませんし、伴奏科で学んだり教えたりした人たちが作曲や、同時代の音楽との接点を多かれ少なれ持ってきたというのは当然かもしれません。

そうした理念というのが自分に合っていて、そして必要なことだというのは日本にいたときから感じていましたし、実際伴奏科に行ってみてそこでやっていることというのは、単純にピアノが弾けて誰かと上手に合わせられればいいというものではなく、伴奏というのはより能動的で創造的なプロセスだということを痛感しました。

伴奏という用語に関していえば、楽器のパートよりピアノのパートのほうが比重や難易度の高い曲はいくらでもあるということはみんな分かっていますし、伴奏者ではなく共演者と呼んだ方がいいといったような議論もあったりしますが、そういった単純な問題に帰着できないなにかギャップのようなものを時たま感じることはあります。

「ピアノ伴奏科」という名称が少し誤解を招きやすく、そもそもCNSMの伴奏科は器楽と歌曲とオペラの3領域でクラスが分かれているので、初めてフランスに来て伴奏科に入りたいというような人たちには是非いろいろ調べてみてほしいと思います。

留学生活で大変だったこと

みんな大好き内部奏法?@IRCAM

袴田:留学生活で大変だったことはありますか?

秋山:まずは語学ですかね。一応受験の後に、B2を提出しなければいけなかったので、TCFを必死で受けていました。

とにかく入学前に!と思って、TCFだとマークシートで試験回数も多かったので、結局日本各地の会場で3、4回受けましたね(笑)

でも逆に、留学前にB2レベルが取れちゃったので、留学してからそんなに焦ることもなく、勉強をやめてしまったんです。

袴田:それ、すごくよくわかります!

私も来る前から勉強していたので、ある程度は聞き取れたり話せたりしていて…そこからぐっと上達するまでには2年くらいかかりました。

秋山:そうそう。だから、こっちに来てからは、とにかく現場で使ってゆっくり慣れていった感じですね。

演奏面では、どんな希望にも応えられるだけの柔軟性と即戦力が求められるので、大変でしたが、おかげでかなり鍛えられました。

袴田:私も秋山さんに伴奏をお願いした時は色々と無茶振りしてしまいましたが、秋山さんの心強さにはいつも助けられていました。

今まで、どんなところで演奏されてきたかお伺いできますか?

秋山:楽器や歌の人のコンクールやコンサート、録音などは、もうずっと毎週のようにあります!

あとは、アンサンブルやオーケストラのコンサートだったり、オペラやバレエ、演劇などの稽古で弾く事もあります。

もちろんそれぞれの現場で求められることが違って、コミュニケーションが必要な場所も多いので、やはりフランス語能力はとても大切ですね。

苦労したフランスでの家探し

伴奏科修了試験にて、インタビュアー袴田美帆さんとCNSMのホールで

袴田:フランスに来るときの家探しはどうされましたか?

秋山:最初はネットで探した物件を、一応契約?口約束?で押さていたのですが、渡仏2週間ぐらい前に「やっぱり前の人が出ません!」と言われて、連絡が取れなくなってしまったんですよね。

袴田:え、詐欺じゃないですか!

秋山:そう。だから急いで他を探していたら、たまたまフランスに住んでる方で、空き部屋を持っている方がいて。

ただ、家族用の大きな部屋だから、長く住むには高すぎたんですが、次の物件が見つかるまでの3ヶ月弱は、ありがたくそこに住ませてもらいました。

そのあとは、インターネットの掲示板で探して引っ越したんですけど、その大家さんが90歳以上で、私の名前すら最後まで覚えていただけなくて(笑)

大家さんも含めて色々トラブルがありすぎたので、もう1回知人の紹介で引っ越して、今ようやく落ち着きました。

他にもいろんな話があるので詳しくは直接聞いてください!

袴田:それは大変でしたね。やっといい物件に巡り会えてよかったですね。

https://www.conservatoiredeparis.fr/fr/medias/video/tomoki-akiyama

毎晩コンサートに通う日々

現在東京を拠点に活動しているEnsemble Tonessek、藝大時代の師匠野平一郎先生を囲んで

袴田:秋山さんは、留学当初から本当にたくさんのコンサートに行かれていますよね!

秋山:はい。コンサートに行くのが好きで、日本にいる時から学生券を利用して、定期的にオーケストラのコンサートなどに行っていました。

それでも、一流の海外アーティスト等の公演は高かったのであまり行けなくて。

いざ留学してみると、日本ではあり得ないくらい安かったので、多い時は週5で聴きに行っていました!

袴田:完全に生活のルーティーンですね。どんなところに行くのが多いんですか?

秋山:もうどこでも行きます。

オーケストラも聴きますし、古楽も現代アンサンブルも頻繁にやっているので、そちらもよく聴きます。

あとはオペラも行くし、毎日必ずどこかしらのホールや劇場で公演があるから、どこに行こうか迷うこともしょっちゅうです。

でもやっぱり、CNSMの立地的にもCité de la musique / Philharmonie de Paris(=フィルハーモニー)に行くことが多いですかね。

袴田:そうですよね!毎年 Abonnement (会員登録をして安く予約出来る制度) で予約されていますか?

秋山:もちろんです!

どんな公演でも、一番下のカテゴリーは10ユーロに設定されているのですが、上のカテゴリでも会員登録をして何公演かまとめて予約すると、安くなるというシステムがあるんです。

また、28歳以下だと若者料金になるので、Abonnementなら1公演8ユーロという破格で聴けます。

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袴田:本当にありがたいシステムですよね。やっぱりCNSMが近い事もあって、多くの学生がこのシステムを利用してたくさんコンサートに行っています。

秋山:はい。有名な公演の安い席はすぐに売り切れてしまうので、何ヶ月も先の予定なんてわかりませんが、興味があればみんなとりあえず買っていますね。

行けなくなっても、安い席だと絶対誰かが代わりに行ってくれるので。

袴田:そうなんですよね。

予約した人の名前も変えられるので、毎日学校の掲示板で、コンサートのチケット情報が飛び交っています。

秋山:それぞれのホールや劇場によって、学生向け料金とか、直前割引とか、安くチケットを購入できる方法が違うので、留学中に色々試してみるといいと思います!

印象に残ったコンサート。フランスでインスピレーションを受け、日本でも企画

フェスティバル・プレゾンスとCNSMの合同企画、作曲家トリスタン・ミュライユ氏を迎えて

袴田:印象に残っているコンサートはありますか?

秋山:色々あるので、ここでは全然時間が足りないですが…

フィルハーモニーの企画で、すごく面白いなと思ったものがあります。

現在、フィルハーモニーを拠点に活動している団体が3つあって

・パリ管弦楽団
・レ・ザール・フロリサン 
・アンサンブル・アンテルコンタンポラン

これらの3団体がほぼ毎年、年に1度合同でコンサートをやる企画があるんです。

そこのホールでしかできない企画だし、異なる時代の作品を演奏する団体が同じ場所に集まってインタラクティブな空間を創り上げていて素晴らしいと思いました。

このような企画を見ているうちに、自分もそんな演奏会を日本でも!と思って、藝大の同級生と、様々な時代の音楽が相互に呼応しあいそれぞれの作品の魅力に新しい光を当てられるような演奏会を目標として、室内楽のグループを立ち上げました。

そこでは演奏と同時に作曲と編曲も担当しています。

以下のリンクから、グループの活動がご覧いただけますので、ぜひ覗いてみてください!

http://mercuredesarts.com/2023/09/14/akiyama-quartet-second-concert-sano/

袴田:おお、ご自身の活動にも生きてるんですね。

AKIYAMA Quartet、一度聴きに行ってみたいです!

現在の活動について

美間拓海さん(ヴィオラ)、ジャン=パスカル・ポストさん(クラリネット)と一緒に室内楽のサロン・コンサート。

袴田:秋山さんは、2022年にCNSMの伴奏科修士課程を終了されていますが、現在の活動について教えていただけますか?

秋山:今は、CNSMの指揮科と、オンドマルトノ科の伴奏員をしています。

袴田:それぞれの内容を具体的にお話していただけますか?

秋山:指揮科の方は、基本的にピアノ2台で、オーケストラの曲を分担して演奏しています。

ただ、パリ音楽院の指揮科の場合は、大体月に1回は学生が実際にオーケストラを振る授業があるので、その日はお休みです。

オンド・マルトノ科は、ちょっと変わっていて説明しづらいのですが…

袴田:CNSMのマイナー楽器を代表する学科ですね!

実は私、副科オンド・マルトノを2年間受講していたのですが、去年学年末試験を受けた時、秋山さんに伴奏してもらったんですよ。

オンド・マルトノを演奏する袴田と、伴奏をする秋山さん

秋山:オンド・マルトノって、レパートリー的にどうしても、古くてミヨーやジョリヴェ等っていうかなり近代から現代に偏っているんですよね。

楽器が生まれて発達したのもフランスなので、フランスの現代音楽が中心。ここでは、自分が今までやってきたことが多少は活きていると思います。

袴田:オンド・マルトノをやってる子も、作曲の子が多いですよね。

秋山:そうですね。オンド・マルトノは、一応鍵盤もあるけれどピアノとは全く違って、リアルタイムで自分で音を作らなきゃいけないっていうのが特徴です。

袴田:私も最初は楽譜が上手く弾けなかったので、とにかく即興で音遊びをしていました。

もうそれが楽しくて、レッスンでも楽譜より即興の時間の方が多かった気がします!

秋山:そうそう。音作りをしながら演奏するっていうのが、作曲の子たちも興味があるのではないでしょうか。

あとは、去年から私立のスコラ=カントルム音楽院のピアノ科にも通っています。

そういえば、これだけピアノを弾いていても、結局1回もピアノ科には行ってないなと思って、入学しました。

袴田:素敵!どんどんMusicien completに向かってますね!

秋山:そうですね。音楽家である限り、一生勉強していたいなと思っています。

留学したい方へメッセージ

師匠ジャン=フレデリック・ヌーブルジェのリサイタル後に門下生と。なぜ食べかけのリンゴを持ってるのかは謎。

袴田:最後に、留学したい方に向けてメッセージをお願いします。

秋山:私は、留学する年齢としては遅い方だったと思うのですが、受験できるクラス等の選択肢が多少狭くなることはあっても、留学するのに遅すぎる事ってないんだな、と実感しています。

ピアノ伴奏科、室内楽科、ピアノ科と結果的にフランスでは日本にいた時とある意味全然違うクラスで勉強しましたが、決して作曲科で学んでいたことが無駄だったとは思っていません。

一方で、もしこれまでやってきたことをより深めていきたい、あるいは全く新しいことに挑戦してみたい、少しでもフランスが気になっていて留学という選択肢を考えている、というのであれば、なるべく早く情報を集めはじめることをおすすめします。

フランスでは複数の科、複数の学校に在籍することは比較的簡単にできるので、さまざまなニーズに応えられる可能性があるはずです。

袴田:そうですよね。特に秋山さんの場合は、フランスに行く前から周りの情報をしっかりとキャッチされていたように感じます。

いくら環境に恵まれていても、自分でアンテナを張っていないと、なかなか情報が入ってこないですからね。

秋山:そうですね。幸いにも周りにある程度フランスに留学していた人がいたのでなんとなくのイメージは掴みやすかったですね。でも受験のシステムとか、滞在許可証などの申請の仕方とか、なにかしら毎年コロコロ変わったりするので、要注意です。

また、レッスンが大切なのはもちろんですが、様々な世代・国籍・文化的な背景を持った仲間たちとの出会いや、日本と異なる文化での経験の方が、留学生活で重要なことかもしれません。

それは社会との繋がりの中で音楽を創っていく上で、新たな視点をもたらしてくれますし、そういう能力は今日音楽家にとって必須のものです。

私は今はCNSMの教職員という立場で生徒たちと接することが多いですが、常に柔軟な考え方と、そしてお互いのリスペクトを忘れないよう心がけています。

「ピアニスト」と一口に言ってもその働き方は様々で、たとえ地味な仕事に見えても音楽界にとって不可欠な存在であることも少なくありません。

これからフランス留学する人たちには、楽器や作品と、あるいは人との新しい関わり方を体験し、いろんな将来の可能性を広げていってくれればいいな、と思っています。

袴田:今日はお忙しい中、とても濃いお話をありがとうございました!

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